表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/17

謎のイケメン男子、未来

「な〜んか、退屈だなぁ・・・」

雄介くんと別れてから、ゆりちゃんはごく普通の大学生活を送っていた。

「ゆり!おはよ!」

「あ、陽子!おはよ!!」

いつもの会話だが、ボクにとってはそれが心地良い。

「ところでゆり、好きな人は見つかった?」

「それが、なかなかねーーー・・・ やっぱり雄介と別れちゃいけなかったのかな?」

うつむき加減です話すゆりちゃんだが、陽子ちゃんは相変わらず元気に切り返した。

「そんなことないよ。たまたま運が悪かっただけだよ。それより次の男探さなくちゃ・・・」

「ま、そうだよね」

陽子ちゃんの元気さに、ゆりちゃんもつられて元気になるいつもの光景。


「それよりもさー、陽子!あたしたち、そろそろ就職だよね?」

「そだねー。ゆりはどういうとこ行きたいの?」

「ん〜、な〜んにも考えてないや!陽子は??」

「あたしも・・・」


しゅーしょく?それってオイシイの??

なんだか人間の世界って、まだまだ分からないことだらけだなぁ・・・

ゆりちゃんの家にこもってばかりじゃ、なかなか分からないこともあるかもね。

そんな平凡な日常が続いていた。


そして、4月になり・・・

「いってきまーす!」

「いってらっしゃい!頑張るのよ!!」

「うん!」

いつもと違うゆりちゃんの服装。

いつものガーリーな服装とは違う、白いブラウスに黒のスーツ・・・そして、下は黒のタイトスカート。

なんだかいつもと様子が違う。ゆりちゃんが変にテンパっている様子が伺える。

これがしゅーしょくというヤツなのか。人間って恐ろしい。


「面接に伺いました、中山ゆりと申します。」

妙にかしこまった話し方だ。

そして、部屋にはゆりちゃんと同じいでたちの若い学生たちが10人ぐらい座っていた。

「それでは、ディスカッションを始めてください。」

中年の男性の一言で10人の人々の会話が始まった。

でも、いつも陽子ちゃんとゆりちゃんが話す会話とは全然違う。


ーーーーテーマ:働き方改革について


チンプンカンプンでさっぱりわからない。

会話の様子も、いつものニコニコ笑顔は微塵も感じられない。

これがしゅーしょく??

だとしたら、ボクは人間になるのは嫌だなぁ・・・

でも、ゆりちゃんに告白したい気持ちもあるし・・・

ゆりちゃんとずっと一緒にいたい気持ちもあるし・・・


本音をいうと、ボクは人間になりたかった。

ゆりちゃんとの生活は確かに楽しいことばかりだ。

時には迷子になったり、捨てられたり、バカにされたり・・・

それでもボクは命の恩人であるゆりちゃんを失いたくはない。

ゆりちゃんに直接想いを伝えるには、人間になるしかない。

でも、どうやって・・・

あ〜、早く人間になりたい・・・

ボクの頭の中は渦を巻いていた。

そしてボクはいつしかゆりちゃんの腕の中で眠りについていたのだった。


「では、以上で一次面接を終了いたします。結果は来週までにご連絡いたします。一次面接を通過された方のみ、次の二次面接の日程等をご連絡いたします。」

「ありがとうございました。」

しゅーしょくという堅苦しい話し合いは終わったようだ。

ようやくゆりちゃんと楽しい会話ができる!


しゅーしょくの話し合いをしたビルを出たゆりちゃん。

「あ・・・雨だ」

外はポツポツと雨が降っていた。しかし今日はゆりちゃんは傘を持っていなかった。

「これぐらいなら大丈夫かな。早く帰りたいし、小走りで行けばなんとかなるか・・・」

ゆりちゃんは小走りで駅へと向かった。

すると、途端に雨は激しさを増し、やがて雷も鳴ってきた。


ーーーーゴロゴロ

段々と雷鳴が大きくなってきた。

ボク、雷キライなんだよねー・・・寝ている時でも雷が鳴るといつも起きて暴れまわっちゃう。

それでよくゆりちゃんに怒られたりしてる。


今日も寝ていたゆりちゃんの腕の中から突然目を覚まし、街中を走ったボク。

「あ!み〜くん、待ちなさい!!」

ボクは無我夢中に走っていった。もちろんなんのアテもない。ただただ雷が怖かっただけだ。

ボクは近くの公園まで走り去っていった。


「も〜、み〜くんったらー・・・今日は餌抜きにしよっ!!」

ゆりちゃんはボクを見失っていたが、どこにいるかは分かっていた。

ボクはいつも雷が鳴ると近くの公園に逃げ出す。

たとえどこへ行こうとボクの行動は同じだったから、ゆりちゃんはすぐにボクがどこにいくか分かっていた。


「見つけた!」

ゆりちゃんがボクを見つけたその時だった。


ーーーードカーン!!

落雷だ!

「キャッ!!」

あまりの衝撃にゆりちゃんは吹っ飛んでしまった。

雷はボクの身体に落ちたのだった。でも、火傷ひとつしていないボク。

なんだかいつもと違う光がボクを包んでいた。


しばらくしてボクは目を覚ました。

ゆりちゃんも無事だった。


「み〜く〜ん!み〜く〜〜ん!!」

いつものようにゆりちゃんがボクを呼び掛ける。

ゆりちゃんの声に元気をもらい、ボクは立ち上がり、すぐさまゆりちゃんのもとへ向かった。


「ゆりちゃん!」

ボクは呼びかけた。

「えっ??」

ゆりちゃんの目の前には、若いイケメンの男子が立っていた。

「ゆりちゃん!!」

若い男子はゆりちゃんを呼んだ。


「だ・・・誰??」

恐々とした様子でゆりちゃんは、突然呼びかけた若いイケメン男子を見つめていた。

「ボクだよ!ゆりちゃん!!」

「えっ?ええっ??なんであたしの名前知ってるの??」

ゆりちゃんの体はブルブル怯えている。

確かにイケメンではあるが、端から見たらストーカー以外の何者でもない。


「ボクだよ!未来(みく)だよ!!」

「えっ!未来(みく)??」

あれ?ボクが喋ってるはずなのに、会話してるのはイケメン男子だよね?

しかも人間のゆりちゃんにボクの会話が通じてる!

これは、まさか、まさか・・・


未来みくって、まさか・・・」

ゆりちゃんは薄々感づいたようだ。

そして、慌ててボクも水溜りに映った姿を見詰めた。

水溜りに映っていたのは、猫ではなかった。

そこには1人のカッコいい人間が立っていた。

ようやくボクは状況を飲み込むことができた。


そう!ボクは落雷のショックで人間になっていたのだった!!















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ