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世にも奇妙な三角関係

とうとう雄介くんとゆりちゃんが、2人きりで遊園地に行く日を迎えた。


「いってきます………」

いつになくゆりちゃんの表情は堅かった。

「おーい、ゆり!猫ちゃんは置いてくのか?」

「あ………!今日は置いてく。お父さん、みーくんの面倒見といて!」

「お……おい!」


お父さんが止めようとするが、ゆりちゃんは聞く耳をもっていなかった。

ゆりちゃんの頭の中は、もうこの間の雄介くんからの電話のことで頭がいっぱいだったからだ。


「ふにゃ~!」

ゆりちゃんに飼われはじめてから初めて、ボクはゆりちゃんに置いてけぼりにされた。


仕方ない。何にもすることないから寝るとするか…

「ほーれ、みーくん、餌だ。」

お父さんはボクの面倒を見たことがない。そのためか、餌のやり方がゆりちゃんより乱暴だった。


「…………」

ボクは何にもすることなく、またゆりちゃんが出ていってイヤな予感がして、ただただふて寝していた。


「おい、こいつどーすりゃいいんだ?まったく、ゆりのヤツ…」

お父さんも眠ったままのボクにほとほと困り果てた様子だった。


その頃、ゆりちゃんは雄介くんと遊園地を楽しんでいた。

2人ともどこかぎこちないままにショーやアトラクションを楽しんでいたようだ。


そして夜も更けまもなく閉園という時に雄介くんが重い口を開いた。


「あのさ、ゆり……この間のことだけどさ」

緊張した面持ちで、雄介くんは口を開いた。

その瞬間、楽しい遊園地の余韻に浸っていたゆりちゃんの表情も急にこわばった。

真剣に雄介くんの話を聞こうとしていたらしい。


「俺………ゆりと付き合いたい!」

ゆりちゃんからの告白をOKしたようだ!


「え…………もう1回言ってくれる??」

嬉しいのか、本当のことを確かめたいのか、どっち付かずの表情でゆりちゃんは答えた。


「だから、俺…………」

雄介くんは意を決してゆりちゃんを前に叫んだ。

「ゆりが好きです!」


ゆりちゃんはこの言葉に完全に舞い上がっていた。

ボクは家に置いてけぼりだったので、詳しいことは分からない。しかし、家に着くなりゆりちゃんはボクに開口一番こう言ったのだ。


「みーくん、聞いて!聞いて!あたし、彼氏ができたの!!」


ゆりちゃんの声はいつもより2オクターブくらい高かった。その表情を見ても、その声色を聞いても、遊園地で雄介くんとゆりちゃんが何をしていたのかが手に取るように分かったのだ。


ボクのゆりちゃんが雄介くんに取られた…

ボクにとってはちっとも嬉しくはない。むしろ悔しかった。

悔しさのあまり、ゆりちゃんの話を聞いた瞬間、ボクはウソ寝をした。


「ねぇ、みーくん起きてー!聞いてよ聞いてよ!今日はすっごく楽しかったんだから!」

こんなにテンションの高いゆりちゃんは見たことがない。

そのテンションは、ボクがゆりちゃん家に迎え入れられた時以上だった。


悔しい。でもこれが運命さだめなのだ。

人間と猫は決して結ばれることはない。人間は人間と恋をする。猫は猫と恋をする。

それが自然の道理なのは正直分かっている。


でもゆりちゃんは命の恩人だ。というよりも、唯一無二の存在なのかもしれない。それはもう恋人をも超える赤い糸で結ばれた何か…


それをいとも簡単にたった1人の見知らぬ男の子に取られてしまったことが正直悔しい。


ボクは1週間くらい悔しくて涙を流していた。

でも、ゆりちゃんがボクに優しくしてくれたのはいつもと変わらなかった。


「みーくん!おはよ♪」

あれからはいつものようにどこへ行くにもボクはゆりちゃんと一緒だった。

ただ1つ、雄介くんと2人きりでデートをする時以外は…


ボクはもう開き直った。

人間と猫の恋が決して実らないのなら、せめて雄介くんとゆりちゃんの恋を応援しよう!そう心に誓ったのだ。


ボクはゆりちゃんが笑顔を見せてくれるだけで幸せだ。

雄介くんとお付き合いを始めてから、ゆりちゃんは今まで以上に弾ける笑顔を振りまいていた。


美しい………その一言がピッタリなほどの笑顔だ。

ボクは応援する!ゆりちゃん、雄介くん、末永くお幸せに!!




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