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恋敵、現る?

「おはよー!」

「あ、陽子ようこ!おはよー」


今日もゆりちゃんは陽子ちゃんと仲良く話をしている。

「おはよ!み~くん!」

「にゃ~!」

陽子ちゃんもボクには優しくしてくれているから、ホントにゆりちゃんと大学に通うのは楽しい。

人間の世界の、大学というところはこんなにも楽しいところなのか?

ボクもできることなら人間になりたい。人間になって、命の恩人のゆりちゃんに告白したい。


「ねぇねぇ、陽子!陽子は、好きな人居るの?」

ゆりちゃんが唐突に恋ばなを始めた。

「え?え??何?いきなり?あたしは、いないよ。ゆりは?」

「あたしは、居る…」


え?ゆりちゃん、好きな人が居るの?それって、まさか、ボク??

そんな淡い期待は、ものの見事に打ち砕かれた。

「サッカー部の、本田ほんだ 雄介ゆうすけくんが好き!あの人、超イケメンだよね?」

雄介ゆうすけくん、あたしと同じゼミの男の子だよ。ゆりが惚れるのも納得だわ。雄介くん、スポーツ万能だし、イケメンだし。うちのゼミの女子の間でも、雄介くんの話題で持ちきりだよ!」


雄介くん??だ、誰??その雄介くんって…

「ホントに~?あたし、ゼミ違うから陽子が羨ましいよー!」

「ん~、あたしにはちょっと敷居が高すぎるかな。あたし、パス!ゆりに譲るわ。」


そんなに人気者の男の子なら一度会ってみたい。

ゆりちゃんは絶対に渡さない!ボクはそう心に違うのだった。

と同時に猫であるボクはどう足掻いても人間にボクの意思は伝わらない。

そんなもどかしさでボクは苛立ちを隠せなかった。


「う~~~。」


無意識のうちにボクは(うめ)き声を上げていた。

ゆりちゃんを、その雄介くんとか言う男に取られてしまう。そう思うと悔しくてしょうがなかった。


「み~くん!静かにしてなさい!!」


いつもならゆりちゃんのお叱りに素直に反応するボク。でもこの日ばかりはゆりちゃんのお叱りを受けることはできなかった。

いや、もう悔しさのあまりそれどころではなかったのだった。


翌日。

「ねぇ、陽子!あたしとサッカー部の見学に行かない?」

「は??あたしは…遠慮しとくわ。雄介くんはゆりに譲るって言ったじゃん?」

「え~~?陽子、お願い!あたし1人じゃ、緊張しちゃうもん!」

「も~、しょうがないなぁ…」


ゆりちゃんの頭の中は、雄介くんという謎の男の子のことでいっぱいだった。


サッカー部のグラウンドに行ってみると、そこでは練習試合が行われていた。

背番号10の男の子がシュートを放つと、見学に来ていた女の子たちの黄色い声援がこだまする。


「きゃ~~!雄介く~~ん!」

この男が本田雄介ほんだ ゆうすけくんという男の子か…絶対にこの男の子にゆりちゃんは渡さない!!


試合を終えると、女の子たちの黄色い声援を横切り、背番号10の男の子は部室へと入っていった。

「ゆり、帰ろっか?」

「うん。」


ゆりちゃんが帰ろうとしたその時、偶然にもゆりちゃんと男の子が鉢合わせした。


「あ……雄介くん!」

「あ……」


2人とも驚いた様子だった。


「あ……あの、今度の日曜日、映画見に行きませんか?」

いきなりゆりちゃんは男の子をデートに誘った。


「あぁ、いいよ!で、君、名前は??」

中山なかやまゆりです。」

「ゆり……俺、本田雄介ほんだ ゆうすけ!よろしくな!!」


どこか少し軽い感じの雄介くん。ゆりちゃんはどうやらこういう男の子がが好きらしい。

でもボクは納得がいかなかった。


「ふぎゃ~!ふぎゃ~~!!」


ボクは怒り狂ったように、犬の遠吠えならぬ猫の遠吠えを発した。


「み~くん!うるさい!!」


もう、ゆりちゃんの言うことなんて聞かないぞ!ゆりちゃんは誰にも渡さない!!


「あれ、ゆりって猫飼ってるのか?俺、猫大好きだから今度連れてきなよ?」

「え?いいの??きゃーーーー!!ありがとう!雄介くん!!」


もはやゆりちゃんの眼にはハートマークがいっぱい詰まっていた。

ボクのことはどうでもいいのかな?

これが、飼い猫と飼い主たる運命(さだめ)なのだろうか…

あーー!!早く人間になりたい!!



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