挨拶回り 研究部門
「いや~待ってましたよ待ってましたよ。あ、お昼まだですね?おい、おーい。ぼさっとしてないで人事部門長にもお昼をお出ししな」
ニコニコ笑顔で研究室から出迎え部下に命令する形でお昼を出してくれた。研究部門長は白衣にもローブにも見える服を着て眼鏡をかけた少年にも少女にも見える怪しい人だった。
アイリーンが言うには研究と実検の末に年齢も性別もわからなくなったせいらしい。真面目に狂っててこわい。
机に並ぶのは肉、パン、色々な色のたれが入ったビン。ピンクとか青とかあるのは何でだよ
「さあさ、うちの名物なんですよこれ。栄養満点!味も組み合わせの数、いやそれ以上にあるんです」
ああ、これは駄目なやつだ。そう俺の本能が告げていた
「すいません、私は食べるものが決められていて。天使なので」
あ、逃げた!
「まあよくわかりませんが決まり厳しいですからね。うーん、残念だなあ」
「ええと、俺が人事部門長でこいつが俺の部下です」
とりあえずは挨拶でうやむやにしてしまおう。
「よろしくお願いしますよ、私は見ての通り研究部門のトップやってます。まあ早速で悪いのですが是非人事部門にお願いしたいことがありましてね?」
早速きやがった、それもストレートに
「あー、すんません。まだ放置されていた仕事場を片付けただけなんで現時点では何をするにもわからないとしか」
「んー、んー。ン~。仕方ないですね、まあ今すぐに!なんてことじゃないんでまた3日後にこちらから伺わせてもらいます」
思いの外あっさり引き下がったが対面に座る俺にわざわざ顔を近づけ有無を言わさない笑顔で約束を迫られた。
「神官長のやつは話が長い割には未来への収穫のなかったでしょう?うちはその点未来思考で兵器は勿論国の開発や農作業まで全てに関わる部門ですからね。まあそんな広く手掛ける部門だからね、人事部門との繋がりは良くして起きたいのですよ」
約束を取り付けると満足したように椅子に深くかけて部門の規模の大きさをひとつ前の宗教部門を比較に出して説明をしてきた。
「そうですね、なるべくお互いに助け合って行きましょう。ですが当然他の部門もありますし出きることと出来ないことはありますことはご了承ください」
相手の言葉に押されているのを感じ取ったのかアイリーンのフォローが入る。
「ええ、私はその出来ることさえやってくれたら文句ないですね。こちらとしてもやれないことを押し通すなんて感じの悪いことやりたくないですしね」
天使は几帳面だなあと笑いながら肉を黄色と黒のたれをつけパンに挟み食べる研究部門長。黄色と黒のチョイスを狙ってやっててもやってなくても質が悪い。
「それじゃあ俺達はここで失礼します。まだ二ヶ所しか回れていないんで……」
「はいは~い。忙しそうですしお見送りはかえって邪魔ですね。うちと仲良くするといいことありますね、間違いないことなんでひとつよろしくお願いね」
ぷらぷらと手を振り見送られながら研究室を後にした
「こええ、なんだあの人。え、三日後にまた合わないと駄目?」
「駄目です。研究者ですから欲が強いんですよ。彼、彼女かわかりませんが」
「にしたってもうちょっとこうオブラートに包んだりしてくると思ってた。見事にジャブくらったけど一応味方なんだよな?」目をそらすアイリーン。おいやめろよ
「冗談だよな?アイリーン」
「実は今のところ国のために貢献してくれてますが元々外部の人間ですしこの国を裏切らないって保証ないんですよね。しかもそれが人材や評価の原因だと責任が私達に……」
実に言いにくそうに答えるアイリーン。国がその国の人間だけじゃないことはよくあるがよりにもよってあいつとか勘弁してくれ。
「あ、いたいた。部長、兵力部門長は出兵につきまたあちらから訪ねてくるそうです。文化・教育部門と経済部門の方々は遅くなることを伝えたら二人同時に挨拶を済ませようとのことで後一時間後に中庭のテラスで待つそうです。外交・交通管理部門からは暫く帰国の目処がたたないとのことで書状による挨拶が届きました」
雑務の人事部門の人間が挨拶回りの間の連絡を伝えてくれた。
「次は文化・教育部門ですね、やりましたよ!手間が減りました」
挨拶回りを早々に手間と明言した天使は気にしないことにして一時間の休みにほっとした。