希望の輝き
そして宇宙を宛ても無く進む「レムリア」があった。しかし希望はそこに輝く。
「姫様のご生誕、おめでとうございます!」
「『ビートラ』王、『リカーナ』女王、万歳!」
『キャステリア』を無くし、消沈した『レムリア』に久し振りに、国民の歓声が響き渡った。
『マンジュ』と名付けられた王女は『レムリア』で最初に生まれた希望の光だった。それが『ヨミ』の力かそれとも『ゴラゾム』の力なのかはわからない。しかし彼女には二度と会う事のない父の力が、確実に流れていた。彼女が『その力』に目覚めたのは『レムリア』がやっと外宇宙へ出た頃の事だった。彼女が艦内で産まれて、すでに三ヶ月が経つ。
「母様、頭が痛い、割れそう……」
彼女は大きな目を閉じ、こめかみに指を押し付けた。頻繁に彼女はそう言うのだ。
「一体どうした事だ、何かが取り憑いているのか?『マンジュ』しっかりせい」
「父様、誰かが私の頭をかき回しているみたいなの?」
「心配ないわ、『マンジュ』。あなたにも『マナの力』が目覚めはじめているのだから、それにしても速いわね、私の時よりも……」
翌日彼女の頭から、あの痛みがすっかり消えた。引き換えに備わった『マナの力』が最初にもたらしたのは、『レムリア』が待ち望んでいた、知らせだった。
「……我々の『ナチュズン』は既に二つめを切り離し、食料も尽きている。しかし信じられようか、今眼下に青く美しく輝く惑星がある。大気も水もある惑星だ、ひとまずこの惑星に下りる。しばらく調査をしてのち、知的生命体が存在していた場合は『リカーナ様』の命令通り、決して移住を無理強いはしない。その場合は、物資の補給を終え『レムリア』を待ち、再び発とう。この惑星までの航路は×××、外宇宙に出れば、我らの航法は格段に有効になるようだ、もう一息だ。この通信が『レムリア』に届く事を願う……」
そう、口伝した『マンジュ』を『ビートラ』は思わず強く抱きしめた。
「父様、痛い……」
「おおっ、すまない」
『ビートラ』は彼女から手を離すと、高らかに叫んだ。
「航路を×××に固定。『ナチュズン』に続け!ようやく光が見えたぞ」
(『ミルノータス』『ゲルノータス』そして『クルノータス』本当によくやってくれました。『ゴラゾム』様、『レムリア』は再び光り輝く事ができそうです………)
『ゴラゾム』の呪術をもっても『リカーナ』の心から彼の記憶を完全に消す事はできなかった。しかし、彼女は『ビートラ』の妃になった時、自ら『レムリアの女王』として生きる事に決めたのだ。何よりそれが彼女の愛した『ゴラゾム』の意志だったからだ。それから数週間後、女王『リカーナ』にもやっと念波で惑星を捉えることができた。娘『マンジュ』の『マナの力』が『リカーナ』のそれを格段に上回っている事に改めて彼女は驚いた。
「やはり、この娘は『ゴラゾム様』の力も受け継いでいる」
この強大な力が果たして吉となるかは『リカーナ』にはわからなかった。
やっと目標の惑星が肉眼で見えた。途中のガス星や初期の火の玉のような星とは違い、青く美しく輝いていた。艦の速度が次第に光速まで落とされ、やがて通常速度に変わった。大気のある惑星に着陸するために『レムリア』はゆっくりと侵入角度をとりはじめた。




