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なっぴの昆虫王国  作者: 黒瀬新吉
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未来を切り開け

「もう少し左を削れ、よしそれでいい」

「全く、『ゴラゾム』様は先王以上にすばらしい王だ」

彼は『キャステリア』の船首を尖らせたのだ。『ゴリアンクス』の物質の中で、もっとも硬い船首部分を削るため艦の電波砲を使ったのだ。その間にも次々と流星は撃突し、容赦なく船体を剥ぎ取っていく。しかし機関は艦の後方にあり、後部艦橋は艦の深部にある、艦自体で最大の流星を突き破る計画だったのだ。彼は『レムリア』の様子をモニターで確認した。『レムリア』もさすがに時折青白く輝き、無傷ではないことを伝えていた。

「電波砲の照準、『キャステリア』の先端に固定。出力最大限に、目標小惑星!」

彼はそう『ルーン』に命令した。機関は出力をさらに上げた。それに伴い、船体の弱い部分が摩擦熱で次第に燃えはじめた。オレンジ色の光が薄いベールのように両艦を包む。

(トレニア色のベールの方が、君には似合うだろうな)


 「目標、確認。本艦到達まで三十、二十九、二十八……」

『ルーン』の言葉を合図に『ゴラゾム』は電波砲を再度チェックした。全てはこの最期の試練にかかっているのだ。

「電波砲カートリッジ・フルオート装填、発射間隔コンマ2。衝撃に備えろ、行くぞ。十・九・八……」

(必ず乗り切ってみせる、『ヨミ』)

「電波砲発射!打ち尽くせ!」

船首直前に電波砲が次々と打ち込まれる。小惑星のもろくなった部分に尖った艦の船首が深く食い込んでゆく。それが小惑星であれ、くさびを打ち込むように進めば分割できるはずだ。船体が持ちこたえる時間内に、小惑星の内部を半分以上進むことができれば突破できる。それが彼の計算だった。しかし小惑星は長い放浪の果て、もっとも重く硬い物質のみが固まっていた。中心に近づくにつれ硬度は次第に上がっていく。やがては右舷の電波砲のカートリッジが尽きた。小惑星の内部の断面が役目を終えた右舷の四連電波砲を容赦なくもぎ取っていった……。


 「左舷の電波砲もそろそろ尽きる、あとは加速した艦の船首の硬度が小惑星のそれをどれだけ上回っているかだ。『ゴリアンクス』の星よ、『キャステリア』そして『レムリア』を希望に導いてくれ」

「ゴギュギギギッ」

激しい衝撃とともに左舷の電波砲は押しつぶされ、それとともに艦の速度が緩やかに減速をはじめた。しかしそれでもゆっくりと『キャステリア』は小惑星を切り裂いて行った。『レムリア』の者には減速のショックで前方へ投げ出される者もいた.しかし前もって『ビートラ』が指示していたため、緩衝材になりそうなものは前方へ集められていたので負傷者は出なかった。やがて立ち上がった一人がこう叫んだ。

「『キャステリア』頑張れ!『ゴラゾム王』!」

それをきっかけに、艦内に大きなエールがわき上がり、『リカーナ』が目覚めた。そして彼女はそれを眺めると、念波で館内の様子を『キャステリア』に送った。

「『ゴラゾム』様、これが届きますか……」

そう言うと『リカーナ』は力つき、再び眠った。


 「ああ、見えるとも『レムリア』の国民たちが、聞こえるとも『リカーナ』……」

艦の速度がますます減速していく中、彼は両目を閉じた。呪力さえそれを念波に変え、それを艦の先端に練り込んだ。小惑星のもっとも硬い中心部でさえ『キャステリア』を止める事はできなかった。大音響とともに分割された小惑星は艦の左右を抜けた。

「君が今度目覚めたとき、もう俺はいない。『ビートラ』と一緒に『レムリア』をしっかり頼むぞ」

『ゴラゾム』は、彼女に彼への愛をすべて忘れる呪術をかけていた。『ヨミ』の試練をおえた彼は繋留ロープを切り離した。


 『キャステリア』は流星群の先に浮かぶ黒い惑星の引力につかまり、ゆっくりと沈んで行った。

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