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なっぴの昆虫王国  作者: 黒瀬新吉
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最後の流星群

「いったい、どのくらいたったのだろうか?」

彼は念波の部屋から出ると『キャステリア』の操舵室の扉を開けた。艦橋から見える被害が、流星群の規模を物語っている。しかし、最後の流星群は今までで最大のものだ。『ヨミ』の言った流星群は既に彼にも感知できる範囲に近づいている。

「おそらく、今度ばかりは『キャステリア』は持つまい」

落下物から『レーダー・システム』をかばい、息絶えた『ヘリメウス』を床に降ろすと、彼は言った。

「よくやったな、『ヘリメウス』よ」

背後のがれきが崩れ、砲術長の『ザーラー』が声を上げた。

「『ゴラゾム』様、多少打ち漏らしました」

「電波砲はまだ打てるか?」

「二百発ほどは、しかし『ヘリメウス』が……」

「打てるのだなっ!」

「は、はい。お任せください」

そこに、副大臣が入って来た。『ゴラゾム』を見ると一礼して、こう報告した。

「艦の損害、はなはだしくも航行システムには異常なし、動力エネルギー残り十五パーセント。『キャステリア』の生存者は艦橋に残ったもの以外おりません」

「そうか、副大臣……」

「電波砲、前部三基大破。右舷・左舷については二基が小破、稼働率三十パーセント。『レムリア』の損害ゼロ、乗員八六四人死傷者無し」

「そうか、皆よくやってくれた。後一息でこの流星群を抜ける、希望の光が見えてきたな。まて副大臣、『レムリア』は乗員八六五人ではないか?」


 「さすがに兄上、記憶は正確だな。ハハハハッ」

副大臣の後ろから弟『ビートラ』が続いて現れた。

「お前、何故戻って来た。『レムリア』を離れるとは」

「皆の総意だ、わが王を守れとな」

「…なんと」

「『リカーナ』は眠っていて連れては来れなかったが、心配ない、流星群を抜ける頃には目が覚めるだろう。俺が流星を捕捉する、副大臣より確かだ、なぁ『メルサー』」

「まぁ、そのようですな、ハハハッ」

そう答えたのは、『ルーン』副大臣の方だった。

「そうか、まあいい。しかし今度の流星群は今まで以上に多いぞ、しっかりやれよ」


 まもなく次元レーダーが昼のように真っ白く輝いた。

「来たぞ、兄上の言う通りびっしりだ」

「よし、『キャステリア』前進、われらの未来へ、進め!」

「操舵長『メルサー』コンマ五度の舵さばきをご覧に入れましょう」

繰り返し言うのも、もっともだ。彼は直撃を避けつつ、流星群を巧みな舵さばきでかいくぐる。やがて艦は速度を上げはじめた。後に続く『レムリア』をかばうためだ。艦の前部の電波砲がすべて沈黙したいま、強硬突破により『レムリア』の損害を最小限にするためだ。『メルサー』は渾身の力で舵を流星群の中心に向かって固定した。彼の右足は落下した天井にすでに押しつぶされている。『ゴラゾム』はレーダーに張り付いている『ビートラ』に確認した。

「後どれ程でこの流星群を抜ける?」

「二十分か?」

「艦の速度はまだ上がるか?」

「既にリミッターが効いています」

『ルーン』がその問いに答えた。振り返らずに『ゴラゾム』は彼に尋ねた。

「船体は耐えられそうか?」

「持って十五分程度、それ以上は……」

「そうか」

彼は『レムリア』いや『リカーナ』のことを思った。

(彼女が目を覚ましたとき、全ては終わっている、そしてまた始まるのだ)

「リミッター解除、速度を上げろ!全員後部艦橋へ移動せよ!」

しかしすでに『メルサー』は彼の指示に答えることはできなかった。


 「ドガガガーン」

またひとつ大きな流星が艦の前部に衝突した。三人は後部艦橋へ移動する途中、機関士の二人を救出した。既に艦には彼らは必要ない、エネルギーは全て注入しているのだ。この流星群を抜ける量はまだ十分に残っている。

「『ビートラ』、機関士を『レムリア』に届けろ。そしてそのままお前は『レムリア』に残り、『キャステリア』の破片を砕け!」

彼の返事を待たず、『ゴラゾム』は後部艦橋のレーダーを確認した。

「最期の流星群は後五分程度で抜ける。『ルーン』は左舷、右舷の電波砲を進行方向に全て向けろ!邪魔になる船体の部分は吹っ飛ばして構わん!」

「やれやれ、全く荒っぽい」

「何をしている、お前は『レムリア』の王だぞ。早く行かんか!」

「わかった、兄上。しばしの別れだ」

「五分後に会おうぞ……」

(愛しの『リカーナ』、『ビートラ』といつまでも幸せにな)

ドアが閉まった。


 「嘘をつかれましたな、『ゴラゾム』様」

「知っていたのか、『ルーン』」

「流星群の突破に、もっと時間がかかる事ぐらいは。それにきっと『ビートラ』様もそのことは」

「そうだろうな、だがやってみせる。これを見てみろ」

モニターに映ったそれは直径が『キャステリア』の倍はある、もはや『小惑星』と呼ぶべき流星だった。

「これを砕くために両舷の電波砲を、しかしあまりにも巨大ですが」

「いや、電波砲だけではとても歯が立たないだろう」

『レムリア』に戻った『ビートラ』は、艦橋の皆に伝えた。

「我々のために、『キャステリア』は盾となる、その破片さえ打ち砕けと『ゴラゾム』王の命令だ。よいか、流星群の先に我々の希望がある、皆で掴むぞ!」

「おおーっ」

やがて『キャステリア』の破片が次々と『レムリア』に向かってきた。しかしそれは船首のもっとも硬い部分、しかも電波砲の痕があるものばかりだ。


 「兄上は、まさか……」

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