虹の村
「久し振りだのう、村長」
ヒラタ大臣は、虹の村の長、ゲンジボタルの「ジゲン」に声をかけた。
「何事かあったのですね、大臣。『虹のしずく』が輝きを増しております」
王国の危機には、必ず『虹のしずく』が反応する。過去にも一度こんなことがあったと伝えられていた。大臣はジゲンとともに参上した『虹色テントウ』の「テンテン」をじろりと見た。彼女は巫女『メイメイ』の娘だ、彼女は母の代理をよく勤めていた。
「毋はただ今『虹のしずく』の暴走を食い止めております。私が大臣のお話を母の代わりに伺います」
「そうか、立派な巫女になったな、あのお転婆の『テンテン』がな」
「大臣。王国が今どうなっているのかを詳しくお話しくだされ」
「ジゲン」は大臣がこの国に現れた訳を尋ねた。大臣は、今までの出来事を二人に全て話すと、最後にこう言った。
「実は『テンテン』、お前にしてもらいたいことが二つある。『ラクレス』は必ず『虹のしずく』を狙ってくる、もちろん命がけでわしは守るが。そなたには七色の原石を持ち出して欲しいのだ。その原石には『メタモルフォーゼ・プログラム』を起動する力が込められているのじゃ」
「伝説ではなかったのですか『メタモルフォーゼ・プログラム』は実在するのですか?」
彼女は大臣に聞き返した。大きくうなずき大臣は話しを続けた。
「この王国とは別の次元に『人間界』という人間たちの住む世界がある。我々はその世界に今まで何度も行っているのだ。あるものは興味本位で、またあるものは野心を持って。わしが知っているのはその度に『虹のしずく』が利用されたということと、それをこの村に封印して以来、王国は平和になったということだ。最後の王国の危機といわれている、暴君『イオ』を倒したのが伝説のカブト王『キング・ビートラ』。それ以降『メタモルフォーゼ・プログラム』は代々王国の女王にのみ伝えられるプログラムとなったのじゃ」
「大臣は、わたしにそれを人間界に持ち出せと」
「その通りじゃ。お前には悪いが『おとり』となって『ラクレス』の配下を倒して欲しいのだ。残念ながら王国のものではヤツらを倒すことはできないだろう。ヤツらを倒せるのはお前が人間に『着床』して、戦士として覚醒させた人間の力を借りるしか無いだろう。『メタモルフォーゼ・プログラム』は人間界の少女でなければ起動しない。二つ目の役目がそれだ」
彼女は立ち上がり、二人に静かに言った。
「心得ました、さっそく母の元へまいりましょう」