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なっぴの昆虫王国  作者: 黒瀬新吉
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虹の意志

挿絵(By みてみん)

 「『黄金のカブト』は、『王宮』にあります。『エビネ池』の底で、国々を守り続けているのです」

「おお、まさしくあなたは『マンジュリカーナ』やっと戻ってこられたのか…」

「なっぴの身体をしばらく借りましょう。レム・マンジュリカーナ!」

『マンジュリカーナ』は薄い紫の衣装をまとい、『エビネ池』の底に向け光を放出した。大きな地響きとともに池の底が隆起し、かつての『レムリア王国』の王宮が池に浮かんだ。神殿の柱の間から水が排出され、『王宮』が再び甦ったのだ。『エビネ池』は城の周囲にあった元の堀に戻った。『マンジュリカーナ』はそれを確認すると、羽根を伸ばしてはばたき、表に飛び出した。『ピッカー』がそれを見て『マンジュリカーナ』に近づく。しかし『マンジュリカーナ』は優しくそれを制した。

「ピッカー、王宮までの護衛には及びません。『黄金のカブト』は私でなければ触れることは出来ないのです。それに『カブト』はきっと、二人きりで話したいと思っていることでしょう」

『レインボー・ランス』を持ち『マンジュリカーナ』は、王宮に向けて飛び立った。厚い雲の切れ間からこぼれる陽に美しく輝く王宮は、数百年もの長い間ずっと彼女を待ち続けていたのだった。


 「数百年も前の王の魂が残っているの?あの王宮に」

由美子がつぶやいた。それに答えたのは『ダゴス』だった。

「お前に見せたヨミの力、それは魂と肉体を分離し、魂を封じ永遠に残すものだ。それは『マンジュリカーナ』が『カブト』のために用いた霊力と同じものだ」

「ただ『カブト』はきっと今でも妃がこの国にいると思っている。そのために王子と戦い、ついにはその手にかけたのだから……」

『ミネス』はそう言って『マンジュリカーナ』のことを心配した。

「見ろ、ヤツの休眠は予想よりかなり短い間かもしれぬ」

『ドルク』は『イオ』の頭部からあらたなツノが成長をはじめたのを指差した。

「『カブト』と一体になれる勇者は、果たしてこの中にいるのですか?」

『ヴィオラ』は『ラベンデュラ』に尋ねた。皆ほとんど、負傷しているのだ。

「『カブト』は『レムリア』最強の戦士、屈強な身体とともにこの国を深く愛するものでなければ最悪の悪魔になる、あの『ゴラゾム』以上の」

『ラベンデュラ』は勇者の名を言いかねた、そのとき『ラクレス』が口を開いた。


 「わしの中の良き心を、『虹の原石』に込めてくれ、『フランヌ』」

『アイリス』が頷く。

「先に言われちまったな、俺のもだ。『サキ』殿」

『コウカ』がツノを震った。『ヴィオラ』も了解した。

「もちろん異存はない、『フローラル』頼まれてくれるか?」

『スカーレット』は『エレファス』に向き直った。

「おまえたち、いいのか、王として再びこの世に戻れなくなるかもしれぬぞ?」

「フフフッ、『レムリア』が無くなってしまえば守るべき国民もいないのだろう」

『ラクレス』が『キング』に笑って答えた。

「『ラベンデュラ』、頼む」

王たちの言葉に触発されてさらに良き心が集まった。

「王には足りないかもしれないが、俺たちにもその思いはあるぜ」

『ピッカー』も『ガマギュラス』も『ギリーバ』もそして『ドモン』も由美子にそう願った。『ダゴス』は彼らととともに進み出るとこう言った。

「由美子、いや『サフラン』。巫女となっての最初の仕事じゃ、しっかりな」


 「あなたもそのつもりでしょう?」

『スタッグ』は『ゲンチアーナ』に手を引かれるままに進んだ。

「すっかりお見通しって訳か、おー、怖い怖い」

肩をカブト王子に借り、最後に二人の王子が『虹の原石』に近づいた。

「『テンテン』、すまんな『イオ』を倒せなくて、俺は」

「ううん、みんながこの国のために力を集めている、あなたのおかげよ」

『デュランタ』は彼が生きて戻ってきてくれたことが何より嬉しかったのだ。

『メイメイ』は二人を見ると微笑みながらオオヒラタの側にそっと近づいた。

「あなたは私が受け持つわ、もう一度『虹の国』の国王『ドルク』として」

「許してくれるのか『バイオレット』、長くお前たちを放っていた、このわしを」

「一度もあなたのことを疑ったことはありませんわ、二人の娘の父親ですもの」

そう言うとはばかること無く、『虹の国』の国王と妃はきつく抱き合った。


 「『バイオレット』もういいかしらね?」

彼女は頷いた。レムリア筆頭巫女、『ラベンデュラ』は呪文をほこら中に響かせた。

「ナノ・エスタリオ・レ・メルモーラ!」

『虹の原石』は八人の『レムリア』の巫女の力を借りて、勇士たちの良き心をひとつに集めた。やがてそれは丸い『虹色の結晶』に変わった。

「これであとは、屈強な身体を持つものだ、しかし皆傷ついておる」

『ミネス』は深く思案した、ここには『カブト』の寄り代となれるような身体はない。『アギト』として『イオ』と戦った『バイス』はとくに深く傷ついていた。

「ああ、この身体がもういちど動くものなら……」

「ひとつだけ方法があります」

『バイオレット』が口を開こうとした時、『イオ』の背が音を立てて割れた。その身体に『アギト』を取り込み、最大の悪魔『イト』がとうとう『レムリア』に誕生した。


 「ぐうるるるるん」

おぞましい叫び声が上がり、再び虹の池の上空に暗黒雲が集まりはじめた。

「『マンジュリカーナ』、一刻も早く『黄金のカブト』をここへ……」

そう言いながら『キング』が王宮を見据えた。

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