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なっぴの昆虫王国  作者: 黒瀬新吉
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イトの真実

 「あれを見ろ!」

『ガマギュラス』が大声を上げた。信じられない光景が『虹のほこら』の外に見えた。二つにちぎられた『アギト』の身体から流れ出る緑色の体液を『イオ』が夢中ですすっていた。

「あいつ、狂ってやがる」

『ギリーバ』が首をすくめた。おぞましい光景を『ドルク』はこわばった顔つきで見ていた。

「いよいよ始まるのか、『イト』が再びこの国に現れる」

『ドルク』はこうなることをすでに知っていたのだ。

「大臣、『イト』とは『レムリア王国』の大王『カブト』のことではないのか?」

『ラクレス』は『ドルク』の声を聞くと彼にそう確かめた、彼は首を大きく横に振った。

「『マンジュリカーナ』がそう国民に伝えさせただけだ、真実は違う」

『ドルク』は『イト』の正体についてこう語った。

「『アギト』を倒した『イオ』は早速『アギト』を取り込み、遂に最強の悪魔と化した。そして『レムリア』王国の光、『マンジュリカーナ』を我がものとするために『レムリア』の城を目指した。その城の中で『マンジュリカーナ』は『カブト』とともに、最後の覚悟を決めていた。『イト』それは『イオ』と『アギト』が融合し生まれた、最強最悪の悪魔だ。それを倒すのはそれ以上の悪魔に『カブト』がなるしかなかったのだ……」


 「愛しい『マンジュリカーナ』、国民たちを守らねばならぬ。わしにその力を貸してくれ」

『マンジュリカーナ』はためらった、この国に更なる悪魔を作り出すことになるかも知れないのだ。その後、彼女の霊力を使っても『カブト』として呼び戻すことが出来ないかも知れない。その心を察した『カブト』は、彼女をきつく抱きしめてこう言った。

「もしもわしの心が戻らなかったときは、必ずわしを殺せ。たとえこの身が小さなかけらになっても、愛しい『マンジュリカーナ』よ、わしはこの国を永遠に見守るつもりだ。お前とわしのこの国を、そして『レムリアの子』たちのためにこれからも永遠にな……」

『イト』の出現により、二人に本当の悲劇が始まったのだ。


 「『イオ』の体が動かなくなったわ」

由美子がいちはやく、異変に気付いた。『イオ』は胸の前で腕を組み、停止した。

「最後のメタモルフォーゼだ、おそらくしばらくは動かないだろう」

『ドルク』は皆に伝えた。それを聞くと『ピッカー』が真っ先に飛び立った。

「いゃああっ!」

「キン!」

『ピッカー』は渾身の一撃を槍に込めたが、『イオ』には全く刃がたたなかった。

「もう、俺たちではこいつを倒すことは無理なのか」

うなだれたまま『ピッカー』は滞空していた。『イオ』の休眠により、一時的に嵐が収まった空をカラスヤンマが飛んできた。『セブリア』から彼がその背に運んできたのは、大ゾウムシの『ミネス』だった。


 「『ラクレス』様、ようやく正気にもどられましたか。よかった……」

懸命にほこらの壁に、背中を押し当てていた『ラクレス』は照れ笑いをした。

「なあに、皆を守るのには、こいつらだけでは無理だからな」

「これは老師、ようこそいらっしゃいました。早速ですが、ご覧の通りです。『イオ』は、もはや休眠に入っております。われわれに立ち向かう術はもうないのでしょうか?」

「『ドルク』殿らしくもない。伝説を思い出してくだされ、大王、『カブト』の伝説を」

「それでは『黄金のカブト』を再び使えとおっしゃるのですね」

「その通り、それが『イト』を倒すためにわれわれに残された最後の方法だ」


 ー『イト』を倒した、『カブト』は、やはり自分の中に住む、悪魔の暴走を抑えることが出来なかった。『マンジュリカーナ』はその大いなる霊力を用いて自ら『虹の戦士』となり、暴走する『カブト』を倒す。しかし愛する王の魂だけは永遠に『黄金のカブト』として『レムリア』に残すことにしたのだ。もちろん、国中には少なからずの反対があった。それもしかたがない、『アギト』、『イオ』、『イト』、そのうえ『カブト』の残した傷跡が『レムリア』のいたるところに深く残っていたのだ。ー

 「私が彼らに変わってこの罪を償います、ひきかえにこの国を離れましょう」

『マンジュリカーナ』は戦いによって分断された国々を回る長い旅に出た。そしてのちに『レムリアの五大巫女』と呼ばれた各地の巫女に、彼女の霊力を分け与えたのである。

 筆頭巫女『ラベンデュラ』、愛と癒しの巫女『スカーレット』、祈りの巫女『バイオレット』、正義の巫女『ヴィオラ』、そして復活の巫女『アイリス』。彼女ら五人は、ルノクスの最後の王女『リカーナ』に繋がる巫女なのだ。


 「『マンジュリカーナ』は『フローラ国』を離れる時、一輪の『トレニア』を摘んだそうです。初めて『カブト』に出会ったのが『フローラの花園』。その時のことをいつも思い出すと『フローラ』の巫女におっしゃられていたそうです」

『スカーレット』がそう話すと、『バイオレット』も話しを続けた。

「そのトレニアを虹の池で拾い上げた翡翠に封じ、永遠に枯れないようにすると、『レムリアの城』を『エビネ池』の底に沈めるために最大の霊力を使われたそうです。完全にその城が池に沈むまで、このほこらに立っていらっしゃった。そして虹の村の巫女にこうおっしゃられたのが『マンジュリカーナ』最後の言葉と伝えられています。『このトレニアはいつでも『虹の村』を通じて『レムリア』を見せてくれる。私たちの子供たち、これからも試練はあるでしょう。それを乗り越えること、そして皆で幸せになることを王とともにいつも願っていますよ……』と」


 「『マンジュリカーナ』はその翡翠ひとつ持って、異界に旅立たれたのじゃ。この国に伝わる伝説は今では長い間に形を変えて伝わっておる。王子の暴走も、『カブト』までもが『レムリア』を破壊しようとしたのも、全て悪魔の企みじゃ、『マンジュリカーナ』を我がものとして、復活しようとした『ゴラゾム』のな。あのときの『ナツメの石』は砕け散ったが、片割れの『赤い翡翠』が残っておったとはな」

「しかし、ミネスよ、『黄金のカブト』はいったいどこにあるのだろう?」

『ラクレス』の問いに答えたのは、ようやく立ち上がったなっぴだった。


 なっぴの身体が輝き、『ブルー・ストゥール』が全身を包む。その姿は今までのなっぴではない。身長も髪の色も変わり、美しいその女性はこう告げた。

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