遂に……
「なっぴにみんなの力を貸して頂戴!」
由美子は皆にそう声をかけた。ほこらの中の仲間から口々に声が上がった。
「そら、ツイン・ドラゴンだっ!」
『ピッカー』から黄龍刀を受け取ったなっぴは、『ゴラゾム』の肩を貫いた。
「グッ……、まだまだ」
なっぴは黄龍刀をランスに納めた。今度は『ガマギュラス』の声だ。
「グリーン・サイス、受け取れっ!」
「えいっ」
『ゴラゾム』のとげが緑龍刀『グリーン・サイス』の一刀で切り落とされた。
「何のこれしき、とうっ」
再びゴラゾムは左右のツノを振りかざして頭突きをした。けれども、なっぴは青龍刀『ブルー・ストゥール』を使って飛び上がった。
「インディゴ・ソード、なっぴ使えるか?」
『ダゴス』が藍龍刀『インディゴ・ソード』を空に投げ上げた。ソードを受け取ると空中から回転しながらなっぴはソードを大上段に振りかざし、渾身の力で振り下ろした。確かな手応えの後、『ゴラゾム』の左のツノが見事に切り落とされた。藍龍刀を納めたランスを握り直し、なっぴはそれを水平に構えた。その突端は『ゴラゾム』の胸を指していた。
「『ゴラゾム』覚悟しなさい!」
(おお、あれは…)
『ギリーバ』はこの技を経験していた。しかし狭いほこらの低い天井でどうするつもりなのだろうか?彼は疑問に思った。『ゴラゾム』の手前でランスを床につき立てた、なっぴは棒高跳びの要領で一気に真上に跳ね上がった。
「ドカッ」
案の定、伸ばし続けたランスのもう片方が天井で固定された。鉄棒の大車輪を水平にしたように、勢いよく何度も回るなっぴに『ゴラゾム』は翻弄される。
「何をするつもりだ」
十分遠心力をつけると、なっぴはランスから手を離した。そしてそのまま空中回転を続けている。その口には『インディゴ・ソード』をくわえていた。そして着地しながら『ゴラゾム』の右のツノを切り落とし、その胸を突き刺した。
「ぐおおおっ……」
『ゴラゾム』は胸を押さえたまま、絶えきれずに数歩後ずさりした。
「とうとう、やった……」
なっぴもみんなもそう思った。しかしその瞬間『ゴラゾム』は両手から念波を送る。左右からそれぞれ切り落とされたツノがなっぴを襲った。
「あっ!」
思わず、由美子は声を上げた。両脇から深く身体を貫かれたなっぴが声も出さずうつ伏した。凍りついたのはその場にいた『ナノリア』の勇士たち、四人の巫女、そして『コウカ』でさえも声が出なかった。やがて低い笑い声が上がった。
「クックックッ、レインボーとやら、ここまで俺を追いつめるとはなかなかのものだ。『ルノクス』の虫人たちと戦っていた頃を思い出したぞ」
なっぴと一体になっていた二人の虹色テントウがなっぴから離れた。
「なっぴ!」
『テンテン』がなっぴを抱き起こした。返事はない、なっぴは息をしていなかった。慌てて胸に耳を当ててみた。鼓動は聞こえてこない、『ゴラゾム』はあまりにも強かったのだ。
「由美子!お前の中の『ヨミの玉』を使うのだ。それしかない、急げ」
『ダゴス』がうろたえたままの由美子を叱咤した。
由美子は、王女の命を封じた『ヨミの玉』を空色シジミから取り出し、なっぴの身体に当てた。『ヨミの玉』は彼女の体に吸い込まれていった。
「ヨミの玉よ、なっぴの命をもう一度呼び戻したまえ!」
由美子はなっぴがもう一度息を吹き返すことを一心に祈り続けた。
「これでわかったか、お前たちはわしに叶わぬことを。異界から現れた小娘はなかなか手強かった、しかしそれも『ラクレス』の身体のわしと少しは戦える程度だ。よし、最大の絶望を与えてやろう」
そう言うと『ゴラゾム』は『虹の原石』に近づいていった。もはやそれを止めることが出来る者は誰もいない。『ゴラゾム』は自分の体から『レッド・ホーン』を取り出すとその結晶を原石にゆっくりと沈めた。
「今こそ目覚めよ、『イオ』、降臨!」




