第一王子
由美子の投げた『レッド・ホーン』を受け取っても、『バイス』には理解できなかった。彼の使える七龍刀は『オレンジ・バイス』のはずだったからだ。
「もう、彼に真実を話してやりましょう……」
そう言ったのは大臣だった。『キング』は黙って頷いた。
「『バイス』、お前はわしの息子ではない。『ナノリア』の第一王子なのだ」
大臣は『バイス』にそう真実を告げた。彼は最初に生まれた王子だった。
それは大臣がまだ『ドルク』を名乗っていた頃の話だ。
「『キング』、本気ですか? 王子を里子に出すというのは」
「ああ、『ジュニア』はお前に預ける。この国がやがて本当にひとつになるためには、もっと大きな広い心を持つ王にならねばならない。この城で将来を約束されたひ弱な王子には任すことは出来ない。『ジュニア』の『レッド・ホーン』を抜き取り、『オレンジ・バイス』を入れてやってくれ、お前のときのようにな…」
『ドルク』は王家の血筋を持っていた、『キング』の実の弟だった。彼は自分の『レッド・ホーン』を抜き取り、『オレンジ・バイス』の力でオオヒラタとなり『虹の村』に住んでいたのだった。『キング』が王となり、『ドルク』を大臣として城に呼び戻したのは、近いうちに『ナノリア』に災厄が起こるのを『ロゼ』がその霊感で感じていたからだった。案の定、弟王子以外の血は『ラクレス』たちに次々と絶やされてしまっていた。
『バイス』はそれを聞くと、自分に厳しく接した、『ドルク』が何故そうだったのか分かった気がした。あの『オモチャ』を肌身離さず持っていたかも、『ラクレス』たちに自分が真っ先に命を狙われたのは『ナノリア』の王子だったからだ。『オレンジ・バイス』が彼から抜き取られても、なお奇怪昆虫人たちと互角に戦えたのかもなるほど合点がいった。
「シャアアッ」
『ゴラゾム』が高く飛び上がり、なっぴに長い腕を振り下ろした。
「キン」
なっぴはその腕を『レインボー・ランス』で跳ね上げた。だが『虹のほこら』の力を持ってしても『ゴラゾム』の力をすべて抑える事は出来なかった。
「ううっ」
なっぴの空いた両脇を『ゴラゾム』の左右のツノがとうとう挟んだ。
「へし折ってやるぜ、小娘覚悟しな!」
次第になっぴは気が遠くなってきた。身体のきしむ音に混じって、耳に由美子の声がかすかに聞こえた。
「なっぴ、これを装着して、早く」
由美子は、なっぴのコマンドスーツと『ゴラゾム』のツノの間に『ブルー・ストゥール』を糸状に変えて滑り込ませた。
「セットアップ・ブルー・ストゥール!」
『ブルー・ストゥール』を装着したおかげで呼吸が楽になった。なっぴはおもいきり『ゴラゾム』の胸を蹴り飛ばし、後方回転をして後ろへ逃れた。
「グフッ、もう少しだったのに、こいつめっ、潰してくれる!」
『ゴラゾム』が念波で無防備になった由美子を狙って巨大な岩盤を飛ばせた。
「グシャッ」
いやな音がした、それは『ドモン』の腕の何本かが巨大な岩盤で潰れた音だ。
「『ドモン』腕が……」
「なあに、また生えてくるさ」
『ドモン』が由美子に笑って言った。
「それに、コマンドスーツを脱いだ由美子の方が、俺は好きだな」
『ドモン』の言葉に、由美子は頬を赤らめ、胸元の広く開いたドレスを両腕で隠した。




