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なっぴの昆虫王国  作者: 黒瀬新吉
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第四章 悪魔ゴラゾム

  ーそれは、混沌(カオス)の中から生じた。善も悪も塊となり二つに分かれた。完全な善と完全な悪と区別することは不可能だった。やがて時が流れ、『ルノクス』『ゴリアンクス』という二つの星となり、生命が生まれる。新しい命が生まれるとそれを食料とする生命体がまた生まれる、捕食者が現れると自らの命を守るべく、数を増やすもの、特殊な能力を持つもの、他の生命体と交雑するもの、それぞれの星では多岐に渡り進化を続けた。最初の知的生命体が二つの星に生まれた時には宇宙と呼ばれる空間にはすでに無数の星が生まれていた。二つの星の知的生命体は、時を同じくして大宇宙を漂流することになるー


 『ルノクス』『ゴリアンクス』この星の知的生命体がのちに『虫人(ムシビト)』と呼ばれる。『地球』と名付けられた辺境の星には、知的生命体がすでに存在していた。彼らの星ではすでに淘汰された獣型、猿タイプの知的生命体だ。地球では節足型、虫タイプの知的生命体は彼らの星の様には進化していなかった。『ルノクス』の虫人で最初に地球に着いたのは三人だった。名を『ミル・ノータス』『ゲル・ノータス』『クル・ノータス』という、彼らは地球に留まることにした。


 『ゴリアンクス』の虫人は特殊な細胞を持っていた。数十人の塊がひとつに融合でき、細胞組織を共有できた。『ゴリアンクス』の虫人たちは、それぞれの種ごとにひとつになり、やがて同じく地球に着いた。こうして再び地球という星で虫人同士の戦いになった。戦いは『ルノクス』の虫人たちが勝利し、『ゴリアンクス』の虫人たちは最後の一人を地球から脱出させた。闇の根源を追い、ともに宇宙の塵となったのは、かつて『ゴリアンクス』の王子だった『ビートラ』であった。やがて『ルノクス』の虫人たちは『レムリア』の地を見つける。この王国の大王の名が、代々『ビートラ』と呼ばれるのは、その名を永遠に忘れないためなのだ。


 その伝説は今の『ナノリア』には伝わっていない、それはあまりにも遠い昔のことだからだ。伝わっているのは、『悪魔』が砕け散った後の『ナツメの石』と『赤翡翠』に悪の心を目覚めさせる力があるということと、その悪魔の名が『ゴラゾム』と言うことだけだ。『ゴラゾム』は『イト』の封印を解き放ち、自らの完全復活を達成しようとしていた。


 『ブラック・ダーク』は突き刺さった地面からまるで意志を持っているかのようにするりと抜けると、まっすぐに『ラクレス』に向かった。『虹のほこら』に黒い影と化した『ブラック・ダーク』が入り込み、『ラクレス』の胸に突き刺さる。それをきっかけに『ラクレス』の身体が激しく痙攣をはじめた。聞き覚えの無い声が響く……。

「今こそ、お前の身体を使わせてもらうぞ、愚かな『セブリア』の王よ」

様子の変わった『ラクレス』はすでに戦えない『コオカ』に向かった。それを見ると、なっぴは『コオカ』をかばうように彼の前に立ちはだかった。

「ふん、生意気に邪魔をするつもりか。ならば見せてやろう、『コオカ』召還、着装。『キング・ラクレス』降臨!」

『コオカ』が突然ぐったりと倒れた、彼に埋め込まれていた『赤翡翠』が抜かれたのだ。それを身体に取り込み『ラクレス』はさらに異形な姿になった。『コオカ』の左右のツノが加わり、元の二本のツノも鋭い枝分かれを増やした。その姿はまさに『キング・ラクレス』と呼ぶべき姿だ。『ゴラゾム』が『ラクレス』に『コオカ』を完全に取り込んだ姿だ。

挿絵(By みてみん)


 「『キング』、お前の血をたっぷりといただき『イオ』をここへ呼び戻す」

『ゴラゾム』はいきなり『キング』の脇腹を左右のツノで襲った。『キング』がそれを両手でつかむ、が、その力を止めることは出来なかった。彼の両脇が裂けた。

「うっ、何という力だ。止めることさえ出来ぬのか」

キングは背面に反り、渾身の力で相手を投げ飛ばした。

「さすがは『キング』まだそんなことが出来るのか。しかし勝負はついた。もうその腕には力は入るまい」

とうとう『キング』は両方の膝をついた。

「キング!」

駆け寄ったのは王子だった。褐色の身体は戦闘用の姿だが、明らかに勝負にならなかった。『ゴラゾム』は念波を使い、王子は真後ろに吹っ飛んだ。

「フフフッ、小僧には俺に触れることも出来まい」

勝ち誇ったように、『ゴラゾム』は笑った。それを見て、なっぴは『ゴラゾム』の前に進み出ると『レインボー・ランス』を握りしめた。


 「私が相手よ、『ラクレス』を狂わせた悪魔!」

「『ゴラゾム』そう呼んでくれるかな、お嬢ちゃん」

なっぴは由美子に合図を送った。由美子が『キング』に近づいた時、『キング』はこう彼女に言った。

「俺は大丈夫だ。それよりも『コオカ』を頼む」

ためらう由美子に『スカーレット』もこう促した。


 「由美子、まだ間に合います。『コオカ』を死なせてはいけません。彼もまた国民のことを第一に考えていた『テネリア』の王なのですよ」

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