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なっぴの昆虫王国  作者: 黒瀬新吉
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虹色テントウとして

 背中にダメージを受けた『コオカ』の前に『シルベハンミョウ』と『カタビラオオコガネ』が立ちはだかった。決死の戦いだ、身軽な『シルベハンミョウ』は飛び回りながら『エレファス』に挑む。しかし『エレファス』の敵ではない、左手で苦もなくはじき跳ばした。それを見て『カタビラオオコガネ』はもう一人の相手に狙いを変更した。

「白いトビムシのような相手だ、こいつは恐るるに足らん」

彼はカタビラを外して二本の『ハチェット(手斧)』を交差して構えた。ツノはない代わりに、身体はオオコガネの大きさを持っていた。『ギリーラ』はオオコガネの前にいる『キュラウエラ』をじっと見ていた。

「あの巨大なオオコガネにこの男は、勝てるのか?」

『ギリーラ』の心配は不要だった。彼は手を合わせて念波を送った。振り下ろされた『ハチェット』は、はじかれ、天井に深く突き刺さった。次の念波でオオコガネは、ほこらの外に投げ飛ばされた。

「おのれっ!お前、念波など使いおって」


 「下がれ、お前ではこいつに叶うまい」

たった一度の手合わせだけで「ラクレス」が起き上がったオオコガネを制した。

「自ら戦うと言うのか、それほどの男なのか?」

『ギリーバ』の頭を再び、ある疑問がよぎった。その時ほこらに青い輝きが入ってきた。『ドモン』だ、ブルーストゥールにくるまれた由美子とリンリンを床に降ろす。するとまゆは自然にほどけていった。

「『リンリン』、しっかりしろ!」

『リンリン』はゆっくり目を開けた。それと同時にほこらが虹色に輝きはじめた。その虹色の光は『リンリン』を包み、虹色テントウ『リンリン』は完全にその輝きを取り戻した。ようやく姉妹は抱き合った。


 「よく戻りました、『リンリン』さあここに」

「お母様」

『リンリン』は『メイメイ』の前に進んだ、『メイメイ』は呪文を唱えた。

「メタモルフォーゼ・バイオレット!」

『メイメイ』は『リンリン』に『虹のかけら』を与えると、紫の『コマンドスーツ』を彼女に着せた。

「私の意志を継ぐのはお前の方だったのよ、『リンリン』」


 その時、『ドモン』が必死に叫んだ、由美子が目を開けない。

「由美子、由美子、死んじゃあ駄目だ!」

「さあ、覚えてるわね、『リンリン』。あなたの恩人を回復させる呪文を」

『リンリン』は、頷くと両手の指を組み高く挙げた。

「ナノ・クリスプール・レ・由美子」

変化は起らなかった、『ドモン』は『リンリン』を少し睨んで言った。

「それ間違ってるのじゃないのか?『リンリン』」

「そんなはずないんだけど……、あっ!」

『ドモン』に抱かれている由美子が片目をそっと開け、ぺろりと舌を出した。

「こいつめ」

彼が由美子を小突いた。


 ようやく起き上がった彼女は『キュラウエラ』と『ダゴス』を見くらべた。

「えっ、どういうこと?何故二人が同時にここにいるの?あなたはいったい何者?」

あり得ない現象を見た由美子はそう叫んだ。『ギリーバ』に近づいた『エレファス』は言った。

「さすがに『ラクレス』は気付いたみたいだな、ヤツの正体を」

「では、やはり、あの男は」

「お前の予感通り、あいつはお前が殺したはずの男さ」


ほこらの一角で『バイス』と王子の二人は『次元ミズスマシ』が次に現れる方向に見当をつけ、神経を研ぎすませていた。そこに『次元ミズスマシ』がまんまと飛び出してきた。二人同時の蹴りが入り、彼は壁に吹っ飛んだ。次元アンテナの触覚がちぎれとび、彼は気を失った。

「ゲェッポ」


あっけない強敵の最後だ。ほっとした二人の背後が急に明るく輝いた。

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