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なっぴの昆虫王国  作者: 黒瀬新吉
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蜂起

 ほこらに響くその声は、人間界から届いている。『ラベンデュラ』は耳を疑った。

「まさかこの声は、『マンジュリカーナ』」

その一瞬の気の緩みに『アギト』は『ラベンデュラ』の制御を振りほどいた。『アギト』は遂に『ナノリア』最強の巫女の霊力をはじき飛ばした。

「ああ、なんということ。『アギト』が私の制御を振り切ってしまった」

寄り代を失った『アギト』は『虹の池』に立ったまま、その動きを止めた。それを見て真っ先に『アギト』の足下に駆け寄ったのは『ギラファ』だ。彼はこの時を待っていたのだった。

「『アギト』は、わしのものだ、さあわしを受け入れろ」

彼は『アギト』によじ上り叫んだ。『アギト』の手が彼をつかみ、胸元まで持ち上げる。

「いいぞ、『アギト』。今こそわしを受け入れろ、『アギト』降臨!」

しかし無残にも『アギト』の手はそのまま握られ、『ギラファ』はその中で潰れた。


 「愚かな、『アギト』がお前ごときに降臨するはずもない」

『ラクレス』は淡々と言った。『コオカ』がせせら笑った。

「『ナノリア』のヤツらに何ができる、さあ、お前たちこいつらを片付けろっ!」

四人の奇怪昆虫人がうなずき、近づいて来た。まともに戦えるのは『ラベンデュラ』をほこらの中に運んだ『ダゴス』と王子、『ハガネ』、大臣、『ドモン』の五人だ。『ラクレス』の言う通り、たった五人では勝負にならない、しかし、まだ戦意は失われていなかった。その時突然、『ハガネ』が声を上げた。

「王子あれをご覧なさい」

「なんということだ、私は夢でも見ているのだろうか?」


 空を飛ぶ軍勢の後ろから、さらに数倍の部隊が押し寄せてくる、二つの塊が一つに混じる。その瞬間次々と地上に落下していく、落下しているのは『テネリア』の兵士だ。地上でも同じだ、押し寄せる敵の背後からクモ族を先頭に『ナノリア』の国民が土煙を上げて立ち上がった。

「戦えっ、これ以上『ナノリア』を汚させるな!」

「『ナノリア』は我々の国だっ」

「ひるむなっ、持つ力を出し惜しみするな!」

空からも地上からも国民の大声が響き渡る、これ以上の援軍はない。その中から一目散に、ほこらを目指して飛び出して来たものたちがいた。


 「しびれを切らして、やって来て良かった、フローラル・由美子」

「『ピッカー』、ありがとう」

『ブラック』に『ツイン・ドラゴン』を止められながらも、由美子は礼を言った。

「全くだ、ついでにくすぶったままのこいつも連れて来たぜ」

「おまえは、確かガマギュラス?」

『バイス』は彼に会うのは女王奪還の時以来二度目だった。

「俺は、少々敷居が高かったが、罪滅ぼしにと思ってなぁ」

「ギリーバ」

「おや、『テンテン』。休憩中か?もう少し休んでいなよ」

この騒動で『テンテン』はやっと気がついた。しかし『コオカ』は全く動じなかった。


 「援軍が来ても、まだまだ俺たちの方が優勢なのは変わりない」

そのとき『ギリーバ』の背後から別の低い声がした。

「さらに俺たちが加わったらどうだ、『コウカ』それに『ラクレス』」

「エ、エレファス。貴様」

「『ギリーバ』はお前に操られていたとはいえ、キングを殺したことを悔やみ、『ゴラリア』で自ら謹慎していた。俺が『レッド・ホーン』を『ハガネ』に預ける程度では本当の平和など手に入らない。それを祈るのは王の仕事ではない、僧正にでも任せろ。もう一度王となり、戦え。と『ギリーバ』が言ってな」


 『ゴラリア』の『オオハナムグリ』はそれまでの白黒の身体から、黄銅色の身体に戻っていた。『コオカ』に似た三本ヅノの『エレファス』として再びここに現れた。そして、もう一人を紹介した。それは『キュラウエラ』だったのだ。


 由美子は天空から『ピッカー』が長い槍を静かに構えるのを見た。

「『侍アブ』か、『テネリア』一の剣の使い手だな、俺が相手をしよう」

「『ピッカー』、お前は槍の使い手だな、わしの居合いに勝てるかな」

『侍アブ』は静かに呼吸を整え、刀の柄に手を添えた。『ピッカー』の突きが放たれた、見えない突きだ、槍の先端が『侍アブ』ののど元に届いたかに見えた。その瞬間槍の先端が切り落とされた。

「名刀、霧ノ太刀か?」

「いかにも、次はその首を切り落としてやろう。苦しまないように一瞬でな」

空中の由美子は、それを見ると『ブルー・ソード』を空に放り投げてこう叫んだ。

「『ツイン・ドラゴン』、『ピッカー』の元へ、『グリーン・サイス』、『ガマギュラス』の元へ」

戦いの武器『ブルー・ソード』は光を失い、『インディゴ・ソード』に戻った。

「『インディゴ・ソード』よ、『ダゴス』の元へ」

黄龍刀、緑龍刀、藍龍刀はそれぞれの伝承者の手元へ戻った。それを見て『ブラック』はこう言って呆れた。


 「あなた気は確か?『ブルー・ソード』を放り出すなんて!」

由美子はそれを聞いて、にっこり笑った。

「あなたと戦ってわかったわ、私の技も全てコピーしているのね」

「そうよ、あなたの攻撃パターンは全てこの『ブラック・ダーク』がコピーしてくれている。ソードの動きは全て防げるわ。だからって武器も無しで勝てると思うの、アッハッハッハ」

『ブラック』は勝ち誇って笑った。

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