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なっぴの昆虫王国  作者: 黒瀬新吉
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アギト降臨

 「メタモルフォーゼ・バイオレット!」

「ほほう、『ナノリア』の巫女はあきらめという言葉を知らんのだな」

大げさにためいきをついて、『ギラファ』は首を傾げた。

「私も手伝うわ、『バイオレット』。メタモルフォーゼ・ヴィオラ!」

『サキ』も紫の巫女の姿に変わった。『スタッグ』も初めて見る母の巫女姿だ。それに続くように、エビネの地下道を抜けた二つの蝶が、ほこらの中に高々と舞い上がる。


 「メタモルフォーゼ・ラベンデュラ!」

オオムラサキが『ロゼ』だ、彼女は王子を迎えに来たのだ。

「メタモルフォーゼ・スカーレット!」

ミズイロオナガシジミが由美子の母、フローラだった。

『ナノリア』の巫女がここに揃った。巫女の元に、『ギラファ』と『ブラック』の手から橙龍刀がふわりと離れて引きつけられていった。大臣が言った通りだ、橙龍刀は巫女の一部なのだ。『ナノリア』の巫女が呪力を使えばそれを『虹の原石』に納めることができる。その場合の寄り代は人型ではなく、巫女の霊力だ。そのため『アギト』を降臨させた後は、霊力を甚だしく消耗する。しかし今は『アギト』の力で『ラクレス』たちを倒さなければならない。四人の巫女は、ほこらを震わせながら、声を合わせた。


 「アギト、目覚めなさい。『アギト』降臨!」

落雷が虹の池に落ちた。水しぶきと粉々に砕けた岩盤が宙に舞う。地響きが収まった時、虹の池に降り立ったのは、三本ヅノの巨大なカブトだった。

挿絵(By みてみん)

 筆頭巫女『ラベンデュラ』が確認した。

「アギトのコマンドは、一人ひとつ、それで霊力は消えてしまう。みんないいわね」

「『マンジュリカーナ』の教えに従ってやってみるわ」

『ヴィオラ』が真っ先にコマンドを唱えた。

「『アギト』よ、カラスヤンマたちを打ち払いなさい、ムルーレ・シード・ス・アギト!」

『アギト』は空を見上げ、三本のツノから紫色の竜巻を打ち出した。そのとてつもない竜巻はカラスヤンマの羽根を苦もなくもぎ取り、たちまち空から一掃した。それを見届けると『ヴィオラ』は『サキ』女王に戻り、気を失った。

『バイオレット』は地上のハンミョウたちに向けてコマンドを発した。

「ムルーラ・シード・ヴィ・アギト!」

紫色の何十と言う火柱が地面に落ちた。『メイメイ』もまた力を無くした。


 「凄い、一瞬であれだけの敵を」

『テンテン』は『アギト』の破壊力もさることながら、それを自在に操る『ナノリア』の巫女の力を、改めて凄いと思った。それは由美子も『ブラック』も同じだった。その時『テンテン』はすぐ後ろに『コオカ』が忍び寄っていことに気付かなかったた。『コオカ』は素早く『テンテン』を羽交い締めにして笑った。

「地下道ってものは誰にとっても便利なものだなあ、『ブラック』のお姉様よ」

「うっ、おのれ、『コオカ』」

「ムン」

電流が流れたように痙攣し、『テンテン』は動かなくなった。『コオカ』は『テンテン』をその場に打ち捨てて『ブラック』に言った。

「さあ、そのアゲハを早く片付けるんだ、ひらひら飛び回って目障りだ」

それを聞くと由美子は『コオカ』を睨みつけた。


 「行くわよ、『ツイン・ドラゴン』。アゲハの舞い」

由美子が『ブラック』に向かった。新しい『ブルー・ソード』が二つに分離して青い『ツイン・ドラゴン』に変形した。『ブラック』はソードを頭上で回転させはじめた。上下の攻撃を主としている由美子のアゲハの舞いは頭上で回転するソードをくぐるのは至難の業だ、由美子には飛び道具のひとつもない。『ブラック』に近づけないまま、回転が次第に高速になり『ブラック・ソード』が少しずつ彼女を追いつめていく。

「『テンテン』のキューでも使えれば、突きができるのに」

しかしキューは床に崩れたままの『テンテン』が握っていた。

「手も足も出ないってところね、もう後がないわよアゲハ」

由美子の背中が壁に当たった。由美子が諦めかけたその時『ブラック』のソードの回転が突然止まった。それは地下道を使って現れた『ドモン』たちだった。

「何、この網は、う、動かない……」


 「『ダゴス』の網は恐ろしく丈夫だ。そらっ」

『ドモン』は投げつけた『ダゴス』の網を巻き取り、彼女の手からソードを絡めとった。

「間に合って良かった、由美子」

「何処へ行っていたの?」

「おやおや、八本足のナイトの登場ね、でも私の武器はもうひとつあるのよ」

肩のカプセルの黒い柄をつかみ、『ブラック』は短剣を抜いた。それは漆黒の妖剣『ブラック・ダーク』。戦う相手の能力を写し取ることのできるものだ。

「あなた自身と戦ってみる?」


 そう言うと彼女は、その妖剣を8の字に回し始めた。


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