因縁の戦い
「ああ、こいつね。でもあんたの方は残りをちゃんと持ってるの?全部揃えないと、橙龍刀は役に立たないんだって」
「『ミヤマ』には手こずったが、『ドルク』に化身してこの通り、かすめて来た。お前の方もまんまとだまし取ったようだな」
「まあ、人聞きの悪い。ちょっと預かったのよ、さあ早く片付けましょう」
「ああ、そうだな、『チスイ』お前は『スタッグ』を始末しろ。『ゲンゴ』は『サギリ』とともに王子だ、『ケンザ』は『バイス』、俺は大臣を倒そう」
「じゃあ女同士でやりますか、行くわよっ!」
『ブラック』はソードを斜めに振り、一度『テンテン』を牽制して由美子に向かって大上段からソードを切り降ろした。それを受け止めた由美子はソードを跳ね上げると真横から斬りつけた。『ブラック』は後ろ飛びでそれを避けるとすぐに後方宙返りをして百八十度身体をひねり、今度は真後ろの『テンテン』に切り降ろした。ランスを縮めていた『テンテン』はそれを片手で跳ね上げた。次の瞬間、のど元に向かってランスが伸びる、『ブラック』はのけぞってその先をかわした。
「ふうーん、やるわね。さすが姉さんってとこかしら、じゃあこれはどうっ?」
『ブラック』はソードの背に手のひらを当てた。そしてそのまま胸の前に構えた。
「ブラック・クロイツ!」
黒い閃光が十字架になって放出された。『テンテン』はランスを回転させはじき飛ばした。それを横目で見ていた『チスイ』は『スタッグ』にこう言った。
「俺が手伝いにいかないと不利だな、やっぱり二人相手だと」
『チスイ』も鋭いかぎ爪を持つ、相手は片腕だ、彼が負ける気はしなかったのも無理はない。『チスイ』は両腕を振り上げた。しかし、『スタッグ』はただのタガメではない。
「シャア!」
同時にふりおろされた腕が届くより早く、彼の右の腕がそれをなぎはらった。
「ギ、ギャーッ」
悲鳴を上げ、『チスイタイコウチ』が最初に倒れた。渾身の力を込めた一撃だ。しかし、『スタッグ』は、とうとう力尽きその場に倒れた。
(そのまま立ち上がらないで……『スタッグ』)
『ブラック』は思わずそう声が出そうだった。
『ケンザ』の狙いはただひとつ『バイス』の肩に集中していた。『セブリア』の奇怪昆虫人とはいえ、オオヒラタを相手にするには傷の残る、肩を狙った攻撃が一番だと思ったからだ。第一の攻撃は毒針を口から吹いた。肩をかばいつつ『バイス』は大アゴを一振りし、起こした風で、それを叩き落とした。
「これならどうだ」
『ケンザ』はくるりと背中を向けて、背中に負っている卵を次々と『バイス』に発射した。背から離れる端から、その卵の中から針が飛び出てくる、バイスは岩陰に身を隠した。それを待っていたように、『ケンザ』は飛び上がり、奇声を発して『バイス』の肩に飛びつき、長く鋭い口吻を伸ばした。
「キケケケケッ」
「ウムッ、こいつ…」
『バイス』は右手で『ケンザ』を殴り、払い落としたが肩に鋭い痛みを感じた。
「そら、もう少しで身体がしびれてくるぞ、俺のシビレゴナは強力だからな」
「おのれ、身体に力が入らない……」
「無駄無駄、すぐに楽にしてやる」
『ケンザ』がソードを抜いた。
「『バイス』、ランスを使って!」
『テンテン』は、そう言うと『レインボー・ランス』を『バイス』に放った。不思議なことに『テンテン』の手を離れると、『レインボー・ランス』は『バイオレット・キュー』に戻ってしまった。それを受け取ると『バイス』は振り下ろして来た『ケンザ』のソードをはじき飛ばし、キューを一文字に構えた。
「『バイオレット・サンダー』」
七色の巨大な渦が『ケンザ』を包み、『ケンザ』は七色の霧になり飛び散った。
「助かった、『テンテン』、そら受け取れ」
再び『テンテン』の手にランスが戻って来た。受け取った後『テンテン』は、力つきた彼が倒れていくのが見えた。肩から入ったシビレゴナの中和には、まだ時間がかかりそうだった。
「『ドルク』も橙龍刀がなければ恐るるに足らん、そろそろ決着をつけてやろう」
橙龍刀を二つ持っている『ギラファ』。しかし、大臣を倒すことができない。互いに技を繰り出し、受け流し、互角の勝負の続く二人だった。
「『ギラファ』、お前は橙龍刀の役割を勘違いしている」
大アゴを互いに噛み合ったまま、力比べになった。気を抜いた方がアゴを砕かれる、クワガタ族の伝統的な戦い方だ。『ギラファ』は『ラクレス』の呪術が次第に解けはじめていた。それが『ギラファ』には不思議だった。勝負は一瞬だった。
「ゴキッ」
『ギラファ』の大アゴが片方砕けた。大臣は『ギラファ』の腕を握ったまま振り回す。一回、二回、三回。そして、『シカバネカナブン』の前に放り投げた。
「グェッ」
岩にたたきつけられ『ギラファ』は動かなくなった。




