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なっぴの昆虫王国  作者: 黒瀬新吉
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虹の原石

 「大臣、とうとう『イト』の封印が解かれたのですね」

『メイメイ』は空を見上げてつぶやいた。その異変はカブト国の『ロゼ』、フローラ国の『フローラル』もそして人間界へ消えた『マンジュリカーナ』の末裔、『万寿香奈』もそれを感じとった。

「なっぴ、まだ間に合うわ、いいこと、けっして諦めてはいけませんよ」

『マンジュリカの玉』は、七色の花びらのひとつひとつが、それぞれの色に輝きはじめた。


 大臣は集結した勇士の気持ちを落ち着けようと、まだやるべきことがあることを説明した。

「『イト』の封印を解いた後、『ラクレス』たちはここに現れる、『虹の原石』に七龍刀を捧げる必要があるのだ。そして寄り代に選ばれた時、『イオ』と『アギト』は降臨する」

「じゃあ、『虹の原石』を壊せばいいじゃないの」

『テンテン』がそう言った。

「それはできない、『虹の原石』はこの国そのものだ、『ラクレス』もそれはできないのだよ」

「ちゃんと、前に話したでしょ、『リンリン』と一緒に聞いてたじゃないの!」

『メイメイ』がそう言って『テンテン』を叱った。


 「あっはっは、姉さんは、いつも上の空だったからね、話しを聞いてなんかいなかったよ」

振り返るとそこに『テンテン』とそっくりの虹色テントウが笑って立っていた。

「『リンリン』、『リンリン』なの?」

「なに言ってんだか、私よ、姉さん」

「ラクレスの呪術は解けたの?」

『テンテン』は不審に思った、『リンリン』は『スタッグ』に助けられたことを告げた。そして彼から預かった『オレンジ・バイス』を取り出してみんなに見せた。それは紛れもない『スタッグ』のものだ。

「彼は、『コオカ』に脇を突かれて、エビネ城にいるわ。後からきっと追いつくから、早く『虹の村』に行け、と私に言ったの」

「『コオカ』か? 『テンテン』を刺したヤツだな。そいつに『スタッグ』もやられたのか」

『バイス』は怒りに震えた。集結した勇士を前にして大臣が重い口を開いた。

「『イト』の封印が解かれた今、この『虹の原石』に『ラクレス』たちを近づけてはならない。何としてもここで食い止めるのだ、さあ七龍刀をこれに」


 真っ先に由美子が『虹の原石』に進み出て『インディゴ・ソード』を抜いた。

「黄龍刀、『ツイン・ドラゴン』、レムリアの勇士に捧ぐ」

由美子は『虹の原石』に、ハチ族『ピッカー』から託された、黄龍刀を突き刺した。まるで水中に沈むように、波紋を原石の表面に立たせながら、黄龍刀は消えていく、フローラ国に伝わる通りだ。

「緑龍刀、『グリーン・サイス』、レムリアの勇士に捧ぐ」

「藍龍刀、『インディゴ・ソード』、レムリアの勇士に捧ぐ」

由美子は次々と龍刀を『虹の原石』に沈めた。大臣が由美子に告げた。

「七龍刀は消え去ったのではない。それを見なさい、由美子」

由美子のさやにはいつの間にか真っ青なソードが収まっていた。

「それがフローラの戦うための武器、『ブルー・ソード』だ」

それを合図に由美子のストゥールが身体を離れ、天空に舞った。

「青龍刀、『ブルー・ストゥール』レムリアの勇士に捧ぐ」

『ハガネ』のコマンドスーツはさらに輝きを増した。

「これで、虹の原石の中核をなす、黄緑青藍の龍刀は揃った。さあ、『テンテン』今度はお前の番だ。

「紫龍刀、『バイオレット・キュー』レムリアの勇士に捧ぐ」

キューが消えた代わりに現れたのは、『レインボー・ランス』だ。

「大臣、あのう、あまり変化がないんですけど……」

「はっはっは、『テンテン』はランスの力をもう引き出していたのだ。不思議なことにな……」

それはなっぴの力に他ならない、『メイメイ』だけが気付いていた。

(ありがとうございます、『マンジュリカーナ』様)


 「さて、残った赤龍刀と橙龍刀だが、これは少し厄介なものでな、『イト』の封印が解けてしまった今、伝承者がそれを捧げると、『イオ』、『アギト』の寄り代となってしまうのだ。王子が赤龍刀を捧げてしまうと『イオ』が王子に降臨してしまうのだ。

「だから、『エレファス』は『レッド・ホーン』を私に託したのです」

そう言って、『ハガネ』は『虹の原石』に近づいた。

「こうするのだ『テンテン』」

彼は『ゴラリア』の『レッド・ホーン』を取り出した。

「赤龍刀、『レッド・ホーン』、レムリアの勇士に捧ぐ」

その時、レインボーランスが赤く輝いた、それを見て大臣は言った。

「赤龍刀と橙龍刀は一度『虹の原石』に捧げてしまうと、伝承者に戻ることはない。それを集めるのが『テンテン』の『レインボー・ランス』の役目だ」

「それで『ナノリア』の『レッド・ホーン』は私に託されたのですね、王や王子が暴走しないように」

『テンテン』はそう言って、デリートガンを抜いた。

「赤龍刀、『レッド・ホーン』、レムリアの勇士に捧ぐ」

デリートガンが吸い込まれていき、ランスがまた赤く輝いた。

「これで、赤龍刀の方で残ったのは『ラクレス』と『コオカ』の持つふたつだけになった。さて問題は橙龍刀の方だが」


 「橙龍刀は全て揃えた者が寄り代になるんでしょう?ならひとつでも、欠ければいいんじゃないの」

『リンリン』がそう言って虹の原石に近づく、それを大臣は見て静かに言った。

「いや、橙龍刀は全て揃えなければ原石におさめることができない。『アギト』がクワガタ族の神というのは真実なのだ。正しくは『アギト』の意味する大アゴや、牙、カマ、かぎ爪のような殺傷能力を持つ昆虫たちの神なのだが」

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