女王 ロゼ
城の最上階に女王は幽閉されていた。そして三人の戦いを見守っていた。
女王は、少しやつれていたが、三人に会うとすぐに笑顔を取り戻した。
「フローラルらしくなったわね、由美子。それに逞しく綺麗になったわね」
「叔母さま、ご無事で何よりです、もう安心してください」
「ありがとう、由美子。そしてあなたは」
「大臣の息子の『バイス』と申します」
「まあ、行方不明になっていた息子さんなのね、大臣にはもう会ったの?」
「いえ、まだです」
「それにしても、『ナノリア』のことを随分知っているようね、頼もしいわ」
「女王様、『リンリン』のこと……、お許しください。」
『テンテン』は女王にひざまずき詫びた。
「ああ、いいのよ、大切なあなたを救うためだから」
「私のため、それは一体?」
「あの子は一人で『ラクレス』たちを相手にしているあなたが心配だと、『ラクレス』がいなくなった時、私にそっと言ったのよ」
それはでまかせだ、『リンリン』は女王に嘘を言ったのだ。
「それは、『リンリン』が女王をだましたのです」
女王は話しを続けた。
「私はね、『テンテン』。それは本心だと思う、だからコマンドを書いたの。それに『ラクレス』に操られていることも知っていた。だからコマンドに少し付け加えた。虹のかけらに触れた時、あなたと同じ『虹色テントウ』に覚醒するように。そしてもうひとつ、『ラクレス』はあなたたちを恐れている。だから二人を引き裂いたのよ」
『テンテン』はもうひとつきいてみたかったことがあった。
「女王様、人間界のなっぴをこの戦いに巻き込んでしまったのは偶然なのですか?」
女王は、答えなかった。それを見て、『テンテン』も由美子もある確証を得た。
「あなたたち、『メイメイ』が『バイオレット』の姿になった時、ある人を思い出したでしょう。その人こそ、昆虫王国『レムリア』の女王、『マンジュリカーナ』の意志を継ぐものです。彼女は戦いを終わらせたあと虹の力を抜き取り、人間界に去られました。その力を今に伝えているのが虹色テントウなのです。『マンジュリカーナ』、その末裔がなっぴです。なっぴはこの王国を救う切り札になるかもしれません。しかし……」
「しかし、なんでしょうか?女王様」
「しかし、我々には人間を王国に呼ぶ力はありません。それは人間界の『マンジュリカーナ』にしかできません」
「『マンジュリカーナ』にお願いはできないのですか?」
「こちらから、それはできません、『マンジュリカーナ』は強い意志のもとに覚醒する。それが『レムリア』の伝説です」
「女王様、『ナノリア』の『レッド・ホーン』は無事なのですか。『ラクレス』はすでにそれを手に入れたのでしょうか?」
『バイス』が尋ねると、女王は微笑んで答えた。
「『レッド・ホーン』も『オレンジ・バイス』も『イオ』と『アギト』の寄り代になる時に必要なだけです。全て集める必要があるのはそれを封印するときだけ、それを集めることができるのは由美子、あなたの持つ『インディゴソード』と『テンテン』の『デリートガン』だけです。七龍刀のうちすでに五つは揃っています。残りの赤龍刀、橙龍刀はお互いを引き寄せるのです。『テンテン』に持たせたその『デリートガン』こそ『ナノリア』に伝わる『レッド・ホーン』から作られたものなのです」
『ヨミ』からの援軍が城に入った。『ドモン』が守備隊長になるはずだったが、『虹の村』に残ったため、『ピッカー』と『ガマギュラス』が担当した。『ナノリア』最強の部隊だ。クモ族、ハチ族、そしてカマキリ族の精鋭が集結した。
「さあ、『エビネ国』に戻りなさい。そして『ラクレス』たちを倒すのです」
「わかりました。そうだ。大切なことをお知らせしていなかった」
『バイス』が女王に王子が生きていることを告げた。
「王子は、『サキ』女王が助け出し、『イト』のほらで無事羽化されました。すでに立派に成長されています」
「おお、『サキ』が、ありがとう。信じていて良かった」
女王は初めて涙を浮かべた。
「今度は俺を召還してくれ、『フローラル・由美子』」
「ええ、その時はね。『ピッカー』」
「『エビネ』までひとっ飛びだ。飛ぶぞ」
『バイス』の声に、三人は大きく頷いた。
間をあけてひとり、また一人と城を飛び去っていく。女王は『コマンドスーツ』の由美子の姿が、一瞬この国を救った伝説の巫女に見えた。
「ごめんなさい、『テンテン』。ひとつだけなっぴが『ナノリア』に来れる方法があるの、それはなっぴが新しい『マンジュリカーナ』として認められること、でもそれは『レムリア』を去られた『マンジュリカーナ』の気持ちを考えたら……」
『ナノリア』の女王『ロゼ』は再び、巫女『ラベンデュラ』として立ち上がる決意をした。
そのころなっぴのいる人間界では、少しずつ平和な日常が戻っていた。




