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なっぴの昆虫王国  作者: 黒瀬新吉
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ナノリアの戦い

 ここナノリアの城では、ラクレスが既に「王」であった。

「そうか、怪しまれるな。そのまま『サキ』に成り済ましていろ、そして捨て城に入りわしたちを待っているのだ。くれぐれも手出しはせぬようにな。なあに、わしが行けば『スタッグ』程度はすぐ片付く。捨て城の『スタッグ』を人質にして、『サキ』に『イト』の封印を解かせるのだ。くれぐれもしっぽを出すなよブラック」

『ラクレス』は、『ブラック(リンリン)』の報告を聞くと不敵に笑いながら言った。

「ふふふっ、これで『イト』の封印を解く準備は整った」


 エビネ国に戻った「スタッグ」を見ると『コオカ』は『サキ』を突き飛ばし、漆黒金剛石をつかむと城を出て行った。

「約束だ、女王は返してやる。ただしここからは出さんがな」

取り巻きの四人が笑った。『スタッグ』の背が、正午の高い陽を反射した。その身体はすでに橙龍刀から放たれたオレンジ色が溢れ出して光り輝いていた。

「なんて素敵な色でしょう、まるで宝石のように綺麗……」

突き飛ばされた彼女を、美しいタガメがしっかりと抱きとめた。うかつにも『リンリン』は、そう口に出してしまった。


 女王の奪還作戦計画は、一点に集中していた。『ラクレス』が城を出た時にあわせて、門を攻撃し破壊する。『ラクレス』と女王を分断して女王を城に残すのだ。城門付近にはケラの掘った塹壕があり、親衛隊が隠れていた。空から急襲するために、昼間はオニヤンマ隊が上空を飛んでいた。敵のカラスヤンマに似せて、羽根も身体も黒くカモフラージュされていた。もちろん夜間はスズメガたちと交代している。そして心強い援軍が向かって来ていると言う連絡を彼は受けていた。

「とうとう、動いたぞ!」

草むらに隠れて数日、正午になって城に動きがあった。『バイス』は、この日をずっと待っていたのだ。『ラクレス』はまだ『ナノリア』の赤龍刀を手に入れていない。どこにあるのか不明だ。西の異国、『ゴラリア』の王『エレファス』は赤龍刀を平和のためにしか使わない。この残りの二つを揃えて、初めて強大な武器となる、まだ勝機はある。城門が開き、『ラクレス』が輿に乗って出て来た。


 「橙龍刀のひとつは、『ギラファ』が持っている、『スタッグ』のもつ橙龍刀もやがてヤツは手に入れるだろう。彼はミヤマからも奪い取るに違いない。寄り代としてはそれだけ揃えればまずまずだ」

『ラクレス』は、『イト』の封印を『サキ』に解かせた後のことを考えていた。

「さて残りの『七龍刀』をどうして手に入れるかだな」

その一瞬を『バイス』は狙ったのだった。

「かかれっ!」

かけ声とともに、塹壕からアオカナブンが飛び出した。

「敵だ、迎え撃て!」

『シカバネカナブン』が剣を振りかざして向かって行った。合図の狼煙が上がった。次々と急降下をはじめるオニヤンマ隊は、抱えていた岩を投げ落とすと、急上昇をした。一撃離脱の方法で、見る間に城門が塞がれた。だが、第二波の攻撃が始まらない。そのとき背後で大きな音がした。

「ドサッ」


挿絵(By みてみん)


 塹壕から見上げると、彼の目には次々と墜落するオニヤンマ隊が映った。

「あれはなんだ?」

ヤンマ型の昆虫人が次々とオニヤンマの羽をむしり取り、蹴落としているのが地上から見える。それはやがてオニヤンマ隊を蹴散らすと「ラクレス」の輿の前に降りた。

「『フランタイヤンマ』遅くなりました。お懐かしゅうございます」

「空の掃除は任せる、地上の掃除は『デンネツカメムシ』お前に任せたぞ」

その後ろの影が動いた。

「ハハッ、すぐに片付けます」

「城の中にも入り込んでいるヤツらがおりますが、その始末は私に」

「おまえに任せよう。『ワケミカマキリ』」


 『バイス』は『ラクレス』の足下に潜んでいた。初めて『ラクレス』を見た時、彼は異国の巨大なカブトに威圧された。『ラクレス』は足下に殺気を感じた。

「いい殺気だ、しかしまだ俺とやるには役不足だな。女王は城に残しておいてやろう。もう用はない、ヤツらに勝てれば褒美に持って行け。わしは南の国、『セブリア』の王、『ラクレス』。今更『ナノリア』など欲しくはない」

そう言うと、輿から降りもせず、ゆっくりと『ラクレス』は城を後にした。

『バイス』は当初の目的のために拳を握りしめてやり過ごし、城に向かった。

「まずは『ロゼ』女王を救わねばならない……」

彼は『シカバネカナブン』を倒しながら、やっと城門にたどり着いた。

それを空中からいち早く見つけたのが『セブリア』の『奇怪昆虫人』の一人『フランタイヤンマ』だ。ターゲットを見つけた彼は、巨大な目を輝かせて、城門に向かう『バイス』の前に急降下した。


 「ゲフフフッ、『ナノリア』にも骨のあるヤツがいるのか、この『フランタイヤンマ』が試してやろう。

『フランタイヤンマ』と名乗る奇怪な昆虫人は、着地すると飛行用の羽根と尾を納めた。

「私は、オオヒラタの『バイス』だ。女王を返してもらおう」

『フランタイヤンマ』は軽く五メートルほどジャンプして回転蹴りをした。ひと蹴りで壁に穴があいた。凄まじい気合いのこもった蹴りだ。『バイス』はそれを見て、オレンジ色に身体を輝かせた。

「レドル・レンジ・バイス」


 橙龍刀の力で『ドルク』となった『バイス』は、戦闘用のスーツに変わった。

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