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なっぴの昆虫王国  作者: 黒瀬新吉
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運命

挿絵(By みてみん)

 「セットアップ、『バイオレット・ランス』」

紫龍刀は『バイオレット・ランス』として、武器に変形し、『リンリン』の打ち降ろした『ブラック・ソード』をはじき返した。『リンリン』はその反動を利用して、後方へ宙返りをした。

「漆黒、乱れ切り。行くわよ!」

左右斜めから交互に『ブラック・ソード』が打ち込まれる。『テンテン』はランスを同じタイミングで左右にまるでメトロノームのように、タイミングよく振りソードを受ける。しかし、『リンリン』の斬りつける、そのスピードは衰えなかった。いや、ますます鋭くなっていく。

「いつまでそうして受けていられるかしらね?」

「目を覚まして。あなたは『虹色テントウ』なのよ。本当は私よりも……」

「アッハハハッ、私はもっと強くて美しい『漆黒テントウ』なの。こんなこともできるのよ」

『ブラック』はソードを天に向けた後、『テンテン』に一振りした。

「ブラック・サンダーバード!」

無数の稲妻が『テンテン』を包む。彼女は胸の前でランスを両手で高速回転させてはじき飛ばした。

「レインボー・スクリュー」

はじけとんだ稲妻が、虹のほこらの壁を大音響とともに壊した。岩盤が崩れてはまずい、『テンテン』は、ほこらから外へ向かって走り出した。

「逃がさないわよ。『テンテン』」


 後を追って、『ブラック』が虹の池に出た。

 (ここなら思うように戦える、だけど……)

『テンテン』はそれでも妹と戦いたくなかった。そのことが、さらに『ブラック』を怒らせた。

「いつまでも避けるだけなの、この臆病者が!」

無差別に無数の稲妻が飛び交った、しかしそれでも『テンテン』は、避けるばかりだ。しだいに『テンテン』は追いつめられていった。

「兄弟で殺し合うのは、惨いことだ。私が代わりに戦おう……」

それまで二人の戦いをじっと見ていた『ドルク』が二人の間に割って入った。

『テンテン』はこれが運命なら、もはや姉として妹を倒すのも運命だと思った。


 「『ドルク』いいのよ。これが運命なら、自分の手で戦いを終わらせる」

やっと決断した『テンテン』に『ドルク』の思いがけない言葉が聞こえた。

「はあん?勘違いするな、俺が倒す相手はな、お・ま・え・だっ!」

いきなり抜いた『ドルク』のソードが『テンテン』の胸を貫いた。

「うっ……」

『テンテン』は虹の池に落ち、ソードをつかんだままゆっくり沈んでいった。


 「余計なことをしなくても良かったのに……」

『ブラック』はソードを収めると彼にそう言った。

「そろそろ、『スタッグ』が「お宝」を持ってくる。急いでエビネ国に戻るぞ」

「メタモルフォーゼ」を解除した「リンリン」は、一度虹のほこらの中を振り返った。

(母さんを封印していて、良かった。さすがに『テンテン』の死ぬところは見せたくなかったものね。さようなら『虹のほこら』……)

『リンリン』は『ブラック・ソード』を一振りした。稲妻の起こした、大きな落盤で『虹のほこら』の入り口は完全に埋まった。


 「『テンテン』、『テンテン』」

彼女を呼ぶ声が聞こえた。意識が遠のくのを、何度も引き戻してくれた声だ。

目を開けたとき、彼女に懐かしい顔が飛び込んで来た。

「あなたは、うっ……」

胸に痛みが走った。その痛みから、再び『テンテン』は気を失った。


 入り口を塞がれた『虹のほこら』の中には、大臣らがエビネ池から戻る途中、合流した由美子と『ドモン』も一緒にいた。虹の池から彼女を引き上げたのは、『ドモン』なのだ。怪我の応急処置も終わり、『テンテン』が目覚めるまでに、四人は『メイメイ』が封印された石棺をやっと探し出した。

「今の『リンリン』は巫女さえ、封印出来るのか?」

大臣は、背筋に冷たい汗が流れた。『ラクレス』が引き出したのか、それとも女王の『コマンド』のためか、すでにその力は『メイメイ』を越えている。ソードは『テンテン』の胸を貫き背中まで達していた。その先端が虹のしずくのひとつ、グリーンのしずくを砕いていた。虹のしずくがひとつでもなくなれば『テンテン』は死んでしまう。『ドモン』は『ドルク』のソードを抜き去ると、彼女が気を失ったまま、それでもしっかり握りしめている『バイオレット・ランス』から、彼女の指を一本ずつ外して抜き取った。

 「由美子、早く『グリーン・サイス』を取り出すんだ。考えている時間はない」

うなずくと、由美子は『インディゴ・ソード』を抜いた。『虹のしずく』は、『虹のかけら』を削ってつくられたものだ。『虹のかけら』を削れるものは、同色の『七龍刀』に限る。砕けた緑の『虹のしずく』をもう一度つくるには、『バイオレット・ランス』の中の『グリーン・ヨーヨー』を『緑龍刀』、『グリーン・サイス』で削るしかない。由美子は一瞬の太刀筋で、『グリーン・ヨーヨー』を少し削りとった。緑のかけらはちいさなしずくとなった。


 「ううーん。ここは『虹のほこら』、私は生きてるの…」

『テンテン』の背中に、新しい緑の『虹のしずく』が吸い込まれた。背中まで到達した傷口も、見る間に塞がり、彼女は起き上がった。

「早速で悪いけど、お母さんの封印を解いてあげなきゃね」

由美子はソードを納めて『テンテン』に言った。彼女もまた妹以上の開封術を使った。

「『リンリン』が、突然私を、ああ、なんてこと……」


 石棺からやっと出た『メイメイ』は、姉娘を、きつく抱きしめるとその時のことを話した。


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