第三章 青龍刀
由美子は『ツイン・ドラゴン』を左右に振り、『キュラウエラ』の青龍刀を受けた。その度に火花が飛ぶ。彼女は両手で『ツイン・ドラゴン』を握ると、頭上で二つに分割させると両手に構えた。それが『ツイン・ドラゴン』の新しい戦い方だ。由美子は『天羽の羽根』を使って上空に飛び叫んだ。
「いくわよ、アゲハの舞」
上空から降下しながら『ツイン・ドラゴン』を振り下ろした。右手の振り降ろす刀をかわしても、今度は横から左手の刀が来る。それを避ければまた右の刀が下から上げられる。上下に加え、左右の動きの刀が加わった。アゲハの華麗で鋭い舞だ。彼の青龍刀の動きはそこまでの素早さはなし。やがて青龍刀は、アゲハの刀にはじき飛ばされた。戦いは終わった。
「あなたは、私のお父様でしょう?」
「何故分かった、由美子」
「青龍刀と聞いた時。いつかお母様がこう言ってらっしゃったの」
(フローラには武器がないの、いえ本当は青龍刀と言う七龍刀のひとつがある。それは大いなる力を呼ぶもの、私はそれを防御用に変形させたの、『天羽の羽根』それがこの国に与えられた『青龍刀』『ブルー・ストゥール』)
「これはフローラの秘密なのだと。私のお父様は青龍刀のダミーを持ち、それを狙ってくるものを異国で食い止めているのだと」
背後で声がした。
「『ダゴス』はあなたのお父様、もうひとつのお名前は『キュラウエラ』様。王女、お見事な『アゲハの舞』でした」
後を追って来た足音は、アシダカグモの『ドモン』だった。
(やれやれ、由美子の事が心配で後を追って来たのか)
「まるで昔の母の舞を見る様だったぞ、由美子」
父は由美子を抱きしめると優しくこう言った。
「ワシはここを離れる訳にはいかんのだ、これをごらん」
洞窟の奥には、無数の『ラクレス』配下の死体が転がっていた。
「さあ、ここだ。由美子」
『キュラウエラ』は洞窟の横にある扉の前に立った。
「時間もあまりない、行け、由美子。エビネ池の門を開こう」
扉を開けると、洞窟に怒濤のように池の水が入って来た。彼は『ブルー・ストゥール』をまとったままの由美子をもう一度抱きしめ、扉の中に送り出した。彼女はゆっくりと水面に向かい浮かんでいった。
「ここから行けばすぐにエビネ国に着く。お前も由美子についていきたいのだろう。なあに洞窟をつかってもおまえのの足は八本、すぐに追い付くさ……」
承諾もとらずに、『ドモン』は洞窟の先にすでに消えていた。
「アッハッハッ、石につまずくなよ……」




