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なっぴの昆虫王国  作者: 黒瀬新吉
32/112

ラッサンブレ・サリューエ

 勝ち誇った彼に風切り音が聞こえた。

「何の音だ?」

彼の背後から青い飛び道具『ブルー・メラン』が戻ってきた。

「ぐあっ!」

彼は羽の一枚がちぎれとび、バランスを崩した。それでも、なんとか地面に降り立った。

「えーい」

頭をめがけて大上段からなっぴのキューが振り下ろされた。彼は反射的に腕を交差してそれを止めようとした。しかしそのキューは斜めに降ろされ彼の肩の辺りから急に真横へと動きを変えた。


「ぐわーん」

横なぐりに殴られた衝撃がしばらく続いた。立ち上がった彼は、絶望的な声を聞いた。

「レインボー・ショット」

なっぴはキューをもう一度突いた。

「バキッ」

『ピッカー』を突いた一撃は、彼の針を見事に砕きその胸を打突した。テンテンの声がひびく。

「なっぴ、デリートしなさい。『ピッカー』のパワー、三十六パーセント」

地面に降りたなっぴはキューを納めると、右の腰に手を近づけた。

「セット・アップ・デリート・ガン」

なっぴはするりと『デリート・ガン』を抜き、コマンドを言った。

「アイ・トランスファー・イット・トウ・ザ・キングダム。王国にお帰り」


 七色の光が『デリート・ガン』から照射された。霧に包まれた彼に由美子が声をかけた。

「ラッサンブレ・サリューエ(試合終了)。もう戦わなくていいのよ」

「そうか……、いつかもう一度、俺と手合わせして欲しいな、フローラル・由美子……」


『ピッカー』が消え去ったのと同時に、クラスの仲間が、グランドに集合した。でも残念ながら昼休みは、ドッジボールができるほどには、もう残っていなかった。仕方なくそれからサッカーに変更された。マイがすまなそうに、なっぴに言った。

「ごめん、私、給食食べたらなんだか眠くなっちゃって……」

「いいのよ、マイ。またやりましょうね、こてんぱんにしてあげるわ、えへへへっ」

 笑顔のなっぴと違って、由美子は少し顔を曇らせていた。彼女の中にある『ヨミの棺』がマイに心を許してはいけないと伝え続けていたからだ。しかしその訳は由美子には解らなかった。

しかし、なっぴもそして「テンテン」さえ「マイ」の正体についてはもちろん、王国の危機については、まだ気付いていない様だった。


 「ふふふっ、まずは成功だわ。『ピッカー』のひと刺しは、じわじわ効くわよ、フローラ国の王女様。次に呼ぶのは、王さえ殺した『あいつ』だから、せいぜい苦しんで死んでちょうだいね」

マイは王国の「ラクレス」に報告した後、そう言った。

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