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なっぴの昆虫王国  作者: 黒瀬新吉
31/112

苦戦するなっぴ

 「いくわよ、『バイオレット・キュー』セット・アップ」

なっぴは左肩に手のひらをかざして『バイオレット・キュー』を取り出した。

「お前には、俺の技はもったいないわ」

『ピッカー』は襟元の剛毛を毒針に変形させて、なっぴに放った。

「気をつけてなっぴ、それは猛毒の針よ」

「任せて、『レッド・ジャイロ・スパイラル』!」

 彼女は、キューを回転させ、前方の毒針をはじき飛ばしながら、上空の竹とんぼを再び呼び戻した。それは回転を続けながら、猛スピードでキューに取り込まれていった。その回転の渦で『ピッカー』の毒針は、全てたたき落とされていった。

「巧い!なっぴ」

由美子が声を上げた。肩の傷はかなり深いが、コマンドスーツは徐々にその傷を塞いでいく。

 

 「ほう、ならばこれはどうだっ!」

『ピッカー』は今度は空に飛び上がる。なっぴは滞空はできないと彼は判断したのだ。そして右腕を巨大な針にかえると一気に突き進んで来た。

「なっぴ、ヤンマを召還、着装しなさい。コマンドは『ヴァイオレット』よ」

「分かった、でもその前にもうひとつ。えいっ」

なっぴは急降下してくる『ピッカー』に青い道具を投げつける。彼は首を傾げてそれをかわす。

「どこを狙っている、フフフッお前、震えているのか」

大きくそれたその飛び道具を『ピッカー』があざ笑った。


 「ヤンマ召還、『ヴァイオレット・ウィング』

なっぴは、高速トビヤンマの羽をセット・アップして舞い上がった。

「ほほう、ヤンマを召還したのか。これで互角ってことか」

途中で目標に舞い上がられて、『ピッカー』は腕を組んだまま滞空した。

「いくぞ」

彼はなっぴの寸前で一度上に飛び上がり、右腕を振り下ろした。なっぴはそれをキューで受け止めた。跳ね上がった『ピッカー』の右手が斜めに振り下ろされる。それをかわしたとたん、反転した彼の右腕の針が跳ね上がり、なっぴの長い髪が少しちぎれる。恐ろしい速さの『ピッカー』の連続技だ。


 「こっちも行くわよ」

なっぴは担いでいたキューを、勢いよく振りおろした。彼は堅い右の手の甲でそれを止めた。キューが跳ね上がった勢いを利用して、今度は握っていた柄の方を突き出し『ピッカー』ののどを突いた。

「うげっ、こ、こいつ棒術の達人か?」

おかえしにとばかりに連続技を決められ、『ピッカー』は思った。


 「今のは、かなりのダメージを与えたでしょ、『テンテン』」

なっぴは、得意そうにコマンダーの中の『テンテン』に話した。

「まだまだ、あいつはかなり強いわ」


挿絵(By みてみん)


「それなら、こいつはどうだ」

『ピッカー』は無数の毒針を発射し、そのすぐ後ろから突撃して来た。まず最初の毒針の幕を払い落とさせて、油断した瞬間にひと突きにする作戦だ。

「この二段作戦で倒せなかったヤツはいない」

彼が思った通り、なっぴは毒針を払うのに精一杯だ。毒針の幕がやっと破れた時、その向こうに突然現れた『ピッカー』の顔が、なっぴを見てにやりと笑った。


「くくくっ、勝った……」

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