第二の刺客
「黒崎マイ、マイです。よろしく」
その転校生、マイは翌日クラスに紹介された。席はたいすけの隣だ。大喜びの彼は、さっそく教科書を開いてマイにみせてあげた。
「前に通っていた学校で、もっと先まで習ってるから、気にしないでいいわよ」
マイは斜め前の席のなっぴと由美子の背中をじっと見ていた。
「ジリリリリリリ」
火災報知器が騒々しく鳴りはじめた。
「今日は避難訓練だったかしら?」
なっぴは一度首を傾げたが、先生の指示通りにグランドに向かった。誤作動だったらしく、三時間目の途中から長い昼休みになった。給食センターから給食が届くまで、グランドでドッジ・ボールだ。あれほど運動神経がいいのに、由美子はすぐボールをぶつけられた。すばしっこく逃げ回るなっぴは、なかなか巧くボールを交わす。
「なっぴ、こっち、こっち」
たいすけがバスを要求した。相手のチームにいるマイを狙って二人で挟み撃ちだ。ボールが回されて、次第にマイを追いつめた。
「それっ!」
跳びあがって避けたはずのマイのかかとに、なっぴの投げたボールが当たった。
チャイムがなった、みんな教室に戻る時間だ。勝負はまだついていなかった。
「続きはまた後で、給食を食べ終わったら、ここに集まろうね」
なっぴはみんなとそう話しながら教室に向かった。
「ボールを片付けてくるわね」
「ごめん、マイ。じゃ、おねがい」
ボールを抱えてマイは体育倉庫に向かって駆け出した。
「遅かったわね。あなたは『ガマギュラス』よりは腕が立ちそうね」
辺りを軽く見回し、マイはボールに止まったスズメバチにそう言った。
「早く俺の本来の姿を召還してくれ『ブラック』」
「そうね、私も『あいつ』が死んじゃうところを早く見たいしね」
そう言うと、彼女は黒い霧を呼び寄せるとそれに向かって叫んだ、
「召還、『ピッカー』」
黒い霧の中から、B・ソルジャー『ピッカー』の姿が現れ、その中へとスズメバチが吸い込まれていった。霧が晴れ『ガマギュラス』の仇討ちに人間界に立ったのは、ずる賢い、そして王国一の槍名人『ピッカー』だ。
「『テンテン』、なっぴ、そしてフローラの王女。まとめて俺が串刺しにしてやる」
「給食が終わってからにして。騒ぎにならないよう、早く片付けてね」
「分っているさ。任しておけ」
彼は右手のリストに仕込まれた『イエロー・ピック』を伸ばすと、先端を丹念に磨いた。
「『テンテン』は本当に殺していいのか?お前の姉だと聞いているが」
「構わないわ、あんな裏切り者。串刺しにしてやって」




