フローラ討伐隊
「ピッカー」がフローラから報告に戻った。クモ族の洞窟内の戦いは巧妙で、連日疲労した兵は逃亡し、減っていく。このままではB・ソルジャーとしての彼の存在価値すら危うくなりそうだった。
(このままではまずい、何とかしなければ)
その矢先に「ギラファ」に呼ばれたのだった。
「なにっ『ガマギュラス』がやられただと……」
内心、彼はしめたと思った。
(どうせ王女など生きてはいまい。『虹のしずく』を手にすれば、彼はキングを仕留めた『ギリーバ』よりも、新しい王国ではきっと上位に立てる…)
「残念ながら、フローラ討伐隊は、全滅です…」
その時、無惨な姿の伝令スズメバチが現れた。
「何が起ったのだ!」
今度は、城の地下に待機していた、守備隊長『ハガネ』の率いる精鋭が、後方から襲って来た。前方には、アシダカグモをはじめとした、クモ族だ。空からの攻撃もできず、疲労した兵士たちには、もうなす術がなかった。
「もはやこれまでか」
ピッカーの留守を率いた討伐隊長は最後の賭けに出た。
「『ダゴス』殿に会いたい」
彼はそう言うと、さっきまでいくつものクモ族の戦士の首を刎ねた槍を、七本足の『ドモン』の前に投げ捨てた。彼はクモ族の首長に兵士の命を救ってくれと言い残し、自ら短剣で命を絶った、それは一瞬のことだった。しかしそんなことで『ダゴス』の怒りは収まらなかった。
「生まれたばかりの王女の命を奪ったお前たちに、かける情けなどかけらもないわっ!」
「まあ待て、お前たち。森に留まり、フローラ国の守備隊をやってみようとは思わぬか?」
『ドモン』はその声の主に振り返った。太く逞しいオオアゴの『ヒラタ』が現れた。旅の途中でひげを蓄えていたので大臣とはすぐには分からなかった。
「大臣もこいつらのことを考えていらっしゃる。これが王国らしいところだ」
『ドモン』は足を一本連れ去って死んだ『キール』も隊長のスズメバチもその槍の腕前には、一目置いていたのだ。
(これからの王国は、今よりもっと良くなるに違いない……)
『ダゴス』もまた大臣の言葉を聞いてそう思った。
「おのれ、おのれ。憎らしいヒラタめ」
『ギラファ』は何度もヒラタに邪魔をされて腹が立っていた。今度はスズメバチの部隊をひとつ、そっくり連れ去られたのだ。
「王女はすでに死んでいたのか、ならば良い。『ピッカー』お前が今度は人間界へ行き、『テンテン』を倒せ。『ガマギュラス』の仇討ちだ、抜かるなよ」
「はっ、お任せください」
彼はフローラ国を落とせなかった代わりに、人間界でひと暴れしてやろうと思ったのだ。
「フローラの王女共々、串刺しにしてやるわ……」




