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なっぴの昆虫王国  作者: 黒瀬新吉
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ダゴスの計略

 間もなく洞窟の入り口に、スズメバチの率いる敵の部隊が集結した。

「『ドモン』作戦通りにたのむぞ」

アシダカグモにそう言うと『ダゴス』はコガネグモと『王女のゆりかご』を背中に乗せた。そして洞窟を奥へと進んでいった。その途中、要所要所で止まっては8個の目で四方八方を確認しながら、ゆっくりと入っていった。

「今こそ、フローラ国を救うときだわい」


 クモ族の脳は格段に大きい。王国は長く平和なときが続いている、それでも体に流れる捕食者としての経験はその脳に溜め込まれていた。それだけではなく彼は、父に聞いたことがあった。この国を襲った最大の危機にクモ族をこの洞窟が救ったと。彼にはここにある数々の仕掛けが全て記憶されていた。

 洞窟の入り口のクモ族は勇敢だった。しかし、やがて少しずつ後ずさりをはじめる。スズメバチたちの隊長の『キール』は『ピッカー』の弟だ。戦意を無くしはじめたクモ族をこう一喝した。

「命の不要なヤツは俺に向かってこい!」


 その声に、クモ族はいっせいに洞窟に逃げ込んだ。八本足の彼らは瞬く間に見えなくなった。それを見ると、ハチの兵士は皆笑いころげた。用心深い『キール』は落ち着いたものだ。隊を三つに分けて間隔をあけて入っていった。

 クモを嗅ぎ分けるのが得意のベッコウバチを先頭に、芋虫を見つけるのが巧いアシナガバチの隊、最後尾がスズメバチだ。そして二十ほどの兵士は入り口で待機させた。逃げ去ったはずのクモ族は、実はアシダカグモの「ドモン」が伏兵として前もって選んでいた精鋭だった。洞窟に入った兵士との距離が十分遠のいた時、彼らはいっせいに入り口を守るスズメバチの兵士に飛びかかった。

 あの素早いゴキブリでも一瞬で餌食になる「ドモン」の鋭い牙は、スズメバチに槍を構える隙さえも与えずに次々と兵士の体に突き刺さった。すべての戦いが終わると彼は合図を送った。


 「ズドドドドッ」

網に吊り下げられていた岩が、クサグモに綱を切られる。巨大な岩は一度に落下し、洞窟の入り口は完全にその岩で塞がれた。そのごう音に洞窟の中を進む兵士は驚き、隊列の間隔が狭くなり、やがて混在して来た。そして洞窟の中を進む度に、一人また一人と兵士は減っていくのだ。『ダゴス』の指示通りに土蜘蛛の仕掛けた落とし穴が、あちこちにあった。それに落ちるもの、また引きずり込まれるものもいて、兵士は次第に数が減っていった。後退しようにも後ろを塞がれたため、前進するしか無い。見上げると天井には、いつでも穴を塞げるように岩が網の上に盛られている。隊を頃合いで二分にするため、天井の網がついに破られた。かなりの兵士が岩に押しつぶされた。

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