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なっぴの昆虫王国  作者: 黒瀬新吉
23/112

オニグモの首長

 「コガネグモが参りました」

オニグモの首長『ダゴス』は大小8個の目をまだ眠そうに開けた。

「何だこんな朝早く、密入国者でも捉えたのか?」

「いえ、王国のトビヤンマが『ダゴス』様の網に……」

今では「ペレット」を主食にしているクモ族だが、フローラ国の守備隊を勤める今。フローラ国への入り口『黒の森』の至る所に『ダゴス』の網が仕掛けられていた。それは恐ろしく丈夫で、五年や十年は風雨に耐える網だ。

「わしの網を避けられないほどのスピードでか? それほど慌てるとはただ事ではあるまい、それで丁寧に弔ってやったのか」

「はい、実はその時これを草むらで見つけました」

「一度私の網に当たって落ちた様です」

 その丸い包みを開いて、『ダゴス』は驚いた。やままゆがのまゆで作った、王家の『ゆりかご』だったのだ。『ダゴス』は側にあった大臣の手紙を開いた。

「何ということだ、王国内に恐ろしいことが起りはじめている」

その手紙は大臣が、『ラクレス』の野望を記したものだ。それをしまい『ダゴス』は守備隊長の『ハガネ』にその手紙を渡すよう、「黒の森一の走り手」である「ハシリグモ」の『イダテン』に渡した。


 「良いか、ものども。我らの力でこの姫を守ってみせようぞっ!」

「おおおうっ」

「いいか『イダテン』、姫は行方不明だと伝えろ、それからすぐに空色シジミを呼んでこい。やがて森にヤツらの追っ手が来よう、久し振りに暴れるぞ!」

「カチッ、ガチチッ」

彼の太い二本の牙が、上下に噛み合った。


 『イダテン』が森に戻った時には、クモ族は洞窟に集まっていた。洞窟は横に長く、その一番奥には、そこに皆が立てこもっても十分な食料と湧き水がある。さらにその洞窟には仕掛けがしてあった。空色シジミが、森に着きさっそく『ダゴス』の側にある、王家の『ゆりかご』を覗き込んだ。

(ああ、まさしくこれは王女、でも既に手の施しようがない)

『ダゴス』も王女の命は、まさに尽きようとしていると感じた、だからこの洞窟の中に空色シジミを呼んだのだった。そこへ見張りのハエトリグモが転がり込んで来て第一報を入れた。

「スズメバチが現れました」

続いてクサグモの第二報が伝えられた。

「アシナガバチ、ベッコウバチも加わっています」

「我らの天敵、ベッコウバチもか」

そう言ったのは参謀のアシダカグモだった。

「スズメバチどもは口々に王女を知らないか、隠すヤツは皆殺しだと……」

ジョロウグモがそう報告すると、『ダゴス』はアシダカグモに命じた。

「洞窟にかくまっていると言え、王女を渡すつもりはないとな」

「いいのですか?」

「わしの言う通りにしろ、守備隊が命がけで王女は守っているとな」

「承知しました」

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