フローラ国
「やったわね、なっぴ」
「由美子のおかげよ」
「メタモルフォーゼを解除して、二人とも。『パピィ』から話しがあるって」
『テンテン』がそう言った。二人はコマンドを終了させた。
「メタモルフォーゼ・シャットダウン」
元に戻った二人に空色シジミに戻った「パピィ」は自己紹介した。
「初めまして、私は『パピィ』。フローラ国から人間界に一足早く来ていたの」
なっぴより先に「テンテン」が聞いた。
「いつから人間界にきてるの?」
「フローラ国がスズメバチに襲われたあとから」
「スズメバチに襲われた?」
なっぴが尋ねると「パピィ」は淡々とこんな話しをはじめた。
フローラ国は「花と草原の国」。森と林の「カブト国」、池と川の「エビネ国」そして王国を守護する祈りの村「虹の村」とともにレムリア王国を構成している。フローラ国にはチョウ族、ハチ族そして甲虫ではハナムグリ族が集まっている。それを束ねているのが『アゲハ一族』。その中からフローラの女王は選ばれる、『フローラル』とは「女王」という意味で、女王の名前ではない。過去には捕食者として存在していた『クモ族』は、国の入り口に当たる『黒の森』に住み、忍び込もうとする密入国者たちからフローラ国を守っている。その守備隊長にはアオカナブンの『ハガネ』が任命されていた。コマンドスーツの鍛え方は、クモ族の首長である『オニグモ』の『ダゴス』に習ったのだ。その日スズメバチが襲ってきたのには、ひとつの目的があった。
「それで、確実にしとめたのか?」
「はい、トビヤンマは間抜けなことに、オニグモの仕掛けていた網に突っ込みました。首の骨が折れ、彼ははすでに即死でした。王女の「ゆりかご」も、もちろん一緒に吹っ飛びました。あの衝撃ではとうてい生きてはいないはずです」
カラスヤンマは自信たっぷりに『ギラファ』に報告した。
「馬鹿者めっ!全くお前たちは、詰めが甘い」
先に戻ったカラスヤンマは、こいつのおかげでまた同じことを聞かされた。
「まあ、お前たちには地上を歩くのは無理だから、仕方の無いことだがな。よし、トビヤンマは仕留めたと言うことなら、すぐスズメバチを送って王子と王女の『ゆりかご』を確認させろ。いいな」
「はっ、ただちに」
そのスズメバチの一軍が、まず「黒の森」を襲ったのだ。その少し前のことだ。




