由美子に続け
「フローラ国の思いとともに、お前を倒す。『ガマギュラス』、覚悟しなさい」
「ほう、お前はフローラのものか」
彼はカマをまたぺろりとなめると勢いよく振り降ろした。
(今度はしとめた……)
由美子は跳ばなかった。『ガマギュラス』がそう思ったのも当然だった。
「カン」
由美子は左のホルダーから短剣を取り出し、その一撃を防いだ。
「うぬ、そんなもので俺様に勝てるかな」
「あーら、あまくみないでね。セットアップ・インディゴ・ソード」
短剣が空色に輝き、すらりと伸びた。
「それが、伝説のインディゴ・ソードか。丁度いい、俺がいただこう」
彼はひるむどころか、にやりと笑った。さすがに百戦錬磨の『ガマギュラス』は次第にアゲハを追いつめていった。何度かそのカマは由美子の戦闘用の『コマンド・スーツ』をかすめる。
それは『やままゆ』の糸で織られていた。それだけではない、アオカナブンの『ハガネ』の技で、鍛えられている。しなやかで強靭な王国一の『コマンドスーツ』だ。
「なかなか丈夫だな、その『コマンドスーツ』は」
彼は由美子の足を取り、床に転がした。そしてすかさず、左のカマで彼女の巻く薄い空色のストールを床に止めた。
「首は鍛えているのかなぁ?お嬢さん、ゲフフフッ」
右手のカマが最上段に振りかざされた時、なっぴが叫んだ。
「いくわよ、カマキリ!」
その声に気をとられた『ガマギュラス』の顔面をけり跳ばし、由美子はなっぴを見た。
「『テンテン』、目覚めなさい。『テンテン』召還!」
虹色に輝く『テンテン』がなっぴの肩に止まった。
(大丈夫かしら、不安……)
「『テンテン』、着装」
『テンテン』が覚醒したシナプスに書き込んでいた通り、『テンテン』は左右のコマンダーに変形し、ヘルメットに固定された。それに連動し、『コマンドスーツ』が起動する。素材はアゲハと同じものだ。だが、なぜかだぶだぶだった……」
「なっぴ、メタモルフォーゼも同時にしなきゃぁだめ。メタモルフォーゼ・レインボー、さあ叫んで」
由美子の言葉に、なっぴは慌てて叫んだ。
「メタモル……、メタモルフォーゼ・レインボー」
虹色の霧の中から現れたのは、生まれたての虹色の戦士だった。しかし『ガマギュラス』は動じないどころかこう言って挑発した。
「おやおや、やっとメタモルフォーゼしたのか。そう来なくっちゃ、つまらんからな。さあ、二人一緒にかかってこい」
「虹のしずくの意志のもと、お前を倒す。『ガマギュラス』、覚悟しなさい」
なっぴは、しかし由美子とちがって武器らしきものは持っていなかった。
「『テンテン』、何か無いの、由美子みたいな伝説の武器は?」
「うーん、デリート・ガンは、武器じゃないからね……」
「何かひとつくらいあるでしょう」
「なっぴに使えるかなぁ」
「早くしてよぉ」
なっぴの左肩の『カプセル』が輝きを増した。紫色の輝きが増し、なっぴの手に手応えがあった。なっぴはそれを強く握った。それは紫の『棒』だった。
「なんなの、この棒は……」
「それは『ヴァイオレット・キュー』、ビリヤードに使うものよ、長さはいくらでも調節できるの、堅くてしなやかよ」
「よし、これでいいわ。いくわよっ」
なっぴはその『ヴァイオレット・キュー』を体の長さ程度に縮めて、頭の上でくるくる回転させながら『ガマギュラス』に向かった。
「ほう、なかなか面白いオモチャだな、ゲフフフッ」




