人間界へ
『ギラファ』は『リンリン』を、巨大な芋虫に成長した『ラクレス』の前に連れてきた。報告を受けると『ラクレス』は不敵な笑いとともにこう言った。
「ほほう、王国にもなかなかの切れ者がいるのだな…」
「あんたたち、いったい何者、返してよ、虹の村に」
「こいつを洗脳するには、時間がかかりそうだ、そろそろわしは休眠しなければならない。その間に念波を送り続けてみよう。『ギラファ』よ、わしが目覚めるまで目立った行動は控えろ、その間わしの配下となる者どもを選んでおけ」
「ハハッ、そのようにいたします」
縛り上げられた「リンリン」は「ラクレス」の部屋に残された。
「テンテン」が女王に会えたのは、そのわずかな隙。まさしく奇跡だった。一部始終を聞いた女王が彼女に言った。
「今回の黒幕は『ラクレス』だというのね」
「はい、恐ろしい相手です。大臣は『メタモルフォーゼ・プログラム』を起動しなければ対抗するのは不可能だと」
「大臣がそう言ったのね」
「はい、私に人間界に行けと」
「おいで。少し時間がかかるわ」
女王は三日を費やして、『メタモルフォーゼ・プログラム』を彼女に余すこと無くコピーした。最後に『デリート・ガン』を授けた。
「原石がないものは召還出来ないの、でも一度デリートしたものは、次には召還出来るようになるわ」
「人間の少女に覚醒させるのはどうすればいいのでしょう?」
『テンテン』は、その手順を詳しく女王から教わった。
「あなたとの相性から着床する相手は、もう決まっているの。小学三年生の『なっぴ』という女の子。でもうまくいくかどうかは、わからないわ」
「ありがとうございます、すぐにでも人間界へ行きます。でもどうすれば」
「おいで、『テンテン』」
女王は彼女を側に呼び、虹色のペンダントを彼女の首から外した。そしてそれにゆっくり息を吹きかけた。不思議な輝きをはじめたペンダントから七色の光がこぼれ、彼女を包んでいく。「テンテン」が次第に小さくなっていった。
「さあ、お行き。『テンテン』送還……」
彼女を人間界に送った後、たまった疲労からすぐに女王は深い眠りについてしまった。
翌朝、彼女が目覚めた時、王国にはすでに闇が広がり始めていた。




