虹の戦士
「そうだ、それでいい。さあこっちに来い、異界の『マンジュリカーナ』よ」
なっぴは、『ヨミ』に向かい、にっこり微笑むと声高くコマンドを叫んだ。
「『メタモルフォーゼ』解除!『七龍刀』よ伝承者の元へ戻れ!」
七色の光は次々と、『巫女達』『レムリアの王達』そして『勇者達』を貫いた。
息を吹き返した皆の前に『レムリア』にはじめて現れた時の姿でなっぴは降り立つと『由美子』『テンテン』そして『リンリン』の三人に駆け寄り、そっと耳打ちした。
(さあ、行くわよ、もう一度…)
足下のなっぴを見ると、『ヨミ』は感心した。
「さすがは『マンジュリカーナ』、犠牲は最小限にか。さあ、わしとともに消え去ろう」
しかしなっぴは『ヨミ』にきっぱりと答えた。
「悪いけどお断り、私はまだ恋もしていないし、三人にはラブラブが待ってるもんね」
「まっ、なに言ってんだか」
そしてなっぴが、次いで由美子が叫ぶ。
「『テンテン』『リンリン』着装、『メタモルフォーゼ・レインボー』!」
「『パピィ』着装、『メタモルフォーゼ・アゲハ』!」
青いアゲハは宙に高々と舞い上がった。なっぴは『ヨミ』の足から膝へそして腰へとバッタをセットアップした足で飛び上がっていく。『マナの力』を解除したためヨミに接触してもそれが可能になった、それはちょこまか動く『虹色テントウ』にさえ見えた。
「お前達、『マナの力』無しでわしを倒せると思っているのかっ!」
「倒すんじゃない、救うのよ、あなた自身の力でね」
(なっぴ、わかったのね、末魔の場所が)
左右のコマンダーから同時になっぴに声が届いた。『ヨミ』の肩まで上り切ったなっぴは、取り出した『バイオレット・キュー』を片手で回転させる。それを合図に由美子が『ヨミ』の注意をそらした。
「行くわよ、アゲハの舞い。『ツイン・ドラゴン』!」
なっぴがキューを長く伸ばし、棒高跳びの要領で垂直にぐんと跳び上がった。
「無駄だというのにわからんのかっ!」
『ツイン・ドラゴン』をかわしながら『ヨミ』が怒りの声を上げた。『空中大車輪』から、なっぴは螺旋状に『ヨミ』の頭上にゆっくり落下していく。『ヨミ』はそれを見ると口をかっと開き、ひと飲みしてやろうとした。
「『母さん』が私に教えてくれた。あなたにも末魔が必ずあるとね、そしてその場所を教えてくれたのは一度はあなたの闇に取り込まれた『ムシビト』」
なっぴはキューを握りしめた。左右のコマンダーから同時に二人の声が聞こえた。
「なっぴ、いっけぇーっ!」
なっぴは、『ヨミ』が繰り返し再生しても、傷口の塞がない場所、『ピッカー』のラペが突き刺さった眉間を狙い『バイオレット・キュー』を構えた。
「打ち抜け、『ヨミ』の末魔を、『レンボー・ショット』!」
打突の反動ではじき返されたなっぴを由美子が受け止め、ゆっくりと皆の待つ地上に降りた。『ヨミ』はそのままの姿勢でぴくりともしない、なっぴは首を傾げた。
「あれれっ、思いっきりはずれかしら?」
「なっぴ、百点よ。見なさい」
なっぴにそう言ったのは、なっぴの母『万寿香奈』。現在は人間界に実体がある『マンジュリカーナ』だった。『ヨミ』から声が漏れた。
「グルルルン、ギロロロン、ぐわあああ、おあおおお、あああ……」
大地を震わす叫び声もやがて収まった。『メタモルフォーゼ』を解除し、四人は『ヨミ』を見上げた。彼は独り言のように話した。
「ああ、そうだ。何もかも思い出した、『マナ』、お前が大宇宙に散らばった時、俺の感じた一握りの愛が一気に目覚めたのだ。闇を解放すればきっと俺たちの産んだ『ムシビト』は滅んでしまうと。『ムシビト』が闇を受け入れるにはもっと時が必要だと。俺もまた『タオ』様に進言し怒りに触れた。俺は自らの身体に兄弟星分の闇を封じ込め、扉の向こうに入った。外からは二度と空かないように厳重な扉の部屋に……」
ヨミの身体が足下から崩れていく、それはどす黒い『カイリュウ』の色とは代わり、塩でできた砂のようだった。『マンジュリカーナ』が再び『マナ』の口伝をはじめた。
「その部屋を初めて訪れたのが、あなたの力を必要とした『ムシビト』の王子『ゴラゾム』だった。あなたは彼を試し、そして約束を果たしてくれた。既に生命エネルギーの残り少ない彼に破格の値をつけて…」
「そうとも、生命エネルギーは『陰』と『陽』、『ヨミ』と『マナ』がバランスして初めて安定する。『ゴラゾム』も『リカーナ』お前も、あのままでは寿命が尽き始めていたのだよ…」
「あなたの中の『マナ』に、『ビートラ』も『マンジュリカーナ』も気付いた、だから最後の切り札を使わなかった。だれだって自分の親を殺せない、いつかはあなたを救ってくれる、そんな『マンジュリカーナ』が現れる事を信じて……」
「それがあの小娘とはな、ハッハッハッ」




