ヨミの本心
「『ヨミ』、あなたを救います…… 」
なっぴは『七龍刀』を左右に振って、『ヨミ』の妖刀を受けた。その度に火花が飛ぶ。彼女は頭上で『七龍刀』を『8の字』に回しながら『ヨミ』を細かく切り刻んでいく。その端から再生が始まる…、再生はする、しかしその度ごとに再生するまでの時間が長くなってくのが、もうはっきりわかるようになった。
なっぴに『テンテン』が告げた。
「再生のスピードは以前の四十八パーセント。これ以上は遅くはならないわ」
「それで十分よ、いくわよっ」
なっぴは降下しながら『七龍刀』をもう一度『ヨミ』の肩に振り下ろした。
「グウ、それで俺に勝ったつもりか。再生までに時間がかかるだけの事だ」
切り落とされた左の肩を右手で押さえてそれでも『ヨミ』は立ち上がる。
「お前、俺を救うとか言ったな、いったいどういう意味だ?」
「『マナ』の話しでよくわかったわ。あなたが『マナ』と同じ、ううんもしかしたら、『マナ』よりも『ムシビト』の弱さを心配していたという事をね」
「ファッハッハ、何を馬鹿な事を、このわしがあの失敗作の『ムシビト』を心配しただと?」
「ええ、造物主『タオ』は『マナ』を大宇宙に行き渡らせた。そしてきっとその後は『ヨミ』、あなたの番だったのよ。全ての生き物の根源、光と闇それは切り離してはならないものなの。しかしあなたはあなた自身の力を彼らに与えたくなかった。失敗作の惑星に住むひ弱な『ムシビト』に……」
「む……」
「闇が暴走したときの恐ろしさ、それをあなたが誰より一番よく知っていたからだわ……」
「勝手な事を……」
なっぴは話しを続ける。
「『タオ』はそれを許さなかった。『ヨミ』あなたもまた『タオ』によって
大宇宙の隅々に……」
「戯言をいうなっ!」
『ヨミ』は再生したばかりの腕を伸ばした。しかしなっぴは後ろに飛び跳ねる。
「あなたは肉体を失っていたと言うけれど、闇もほとんどは解放されていたのよ、その大半はあなたの作った『ゴリアンクス』、失敗作の惑星に住む『ムシビト』の王子達にね」
「そんな、まさか……」
「光に続き闇が既に大宇宙に広がっている事を、あなたは認めたくなかった。だってそうでしょう、もしそうなら『ムシビト』はとっくに滅んでいるはずだから」
「わしの闇を既に持っていただと、あの失敗作の『ムシビト』の王子が……」
「ええあなたは、気付いていたはずよ『ゴラゾム』の中にあなた以上の闇と、それに負けない光、『マナ』がある事に……」
「黙れ、黙れ、もうたくさんだっ!」
「あなたの居場所は『ヨミ』の扉の向こう、そして『マナ』はそれを包んでいる。それが大宇宙の真実の形……。それがあなた達の別名、大宇宙の創造主……」
「『タオ』、お前はまさか俺たちこそ、『タオ』だとそう言いたいのか?」
「ええ、そして闇のあなたが『マンジュリカーナ』を求めるのは、『タオ』になろうとするから、『マナ』の力溢れる『マンジュリカーナ』の存在を知ったから」
「じゃあさっさと俺のもとに来い、『マンジュリカーナ』!」
『ヨミ』の腕をもう一度避けると、なっぴはゆっくり『七龍刀』を構え直した。
「残念だけど、それはできないわ、言ったでしょう、あなたを救うって」
何度も『ヨミ』はなっぴを掴もうとする、しかし『七龍刀』がその度『ヨミ』を切り裂く。
「何故だ、何故お前は拒む。『マンジュリカーナ』さあ、わしの元へ来い、そうすれば……」
「そうすれば、『ヨミ』あなたは完全に大宇宙から消え去るのでしょう?」
「む ……」
「反物質のあなたは『マナ』に触れた時、消え去ってしまった事を経験している。だから遠くからそうやって『ムシビト』達を見守ってきたのね。闇を自分に封じ込めて……」
「わしは、すでに『マンジュリカーナ』でなければ倒せない。お前の中の溢れる『マナ』でしか、そうさ、わしはお前を食らう、永遠にこの体を消し去るにはそうせねばならないのだ」
それを聞くとなっぴは何を思ったか、『七龍刀』を放り投げた。




