虹のほこら
虹の池は王国の親衛隊の精鋭が守っているはずだった。しかし、『虹の滝』に向う途中には親衛隊のムシビトやラクレスの手のもの「シカバネカナブン」双方の死骸がいくつもあった。滝の裏に隠れたほこらでは虹色テントウの巫女「メイメイ」が『虹のしずく』の原石を守っていた。『ラクレス』はすでにそのありかをつきとめ、行動をおこしていたのだ。
「なんと『ラクレス』は、想像以上に頭の回転の速い相手だ。急げ、二人とも」
大臣は全力で走った。真っ先にほこらにとびこんだのはだ大臣がった。
「おや、奇遇ですな、大臣」
「『ギラファ』、貴様……」
それはまさに、『メイメイ』が殺されようとしているところだった。
「フフフッ、貴方の始末の方を先にいたしましよう」
『メイメイ』を投げ捨てた『ギラファ』は、一回り大きくなっていた。太く湾曲した大あごをいっぱいに広げ、大臣に向かってきた。彼は大臣に続けざまに攻撃をしかけた。それをかわしながら、「テンテン」に目配せをした。彼女は『メイメイ』の手を引きほこらから外へ連れ出そうとした。ちょうど『ギラファ』の死角になったとき、手を伸ばして祭壇の『紫の箱』をそっと持ちだした。それをみて大臣は安心した。
(これでよい、こいつは俺が引き止めよう)
大臣は、隙を見て相手の足をすくった。『ギラファ』は大臣より重心が高く、簡単に転倒した。しかし、『ギラファ』は仰向けになったまま大臣に抱きつき羽交い締めをし、大あごを大臣の喉元に入れた。
「ぐっ」
「ファツハッハッ、お前の負けだな」
(もはやこれまでか……)
大臣は覚悟を決めた。その時、ほこらの入り口から声が上がった。
「大臣、加勢いたそう」
「その声は、ミヤマ……」
『ギラファ』はその声を聞くと一瞬大あごの力を抜いた。その瞬間、大臣は足で『ギラファ』の腹をけり上げて、巴投げで『ギラファ』を投げ飛ばした。
「ぐうっふ」
今度は『ギラファ』が背中を岩に叩き付けられた。虹の村を守る親衛隊の隊長、ミヤマクワガタの『ミヤマ』は歴戦の勇士だ。さすがに『ギラファ』は不利を悟リ、戦いをやめた。
「ふん、まあいい、今日のところは引き下がろう。土産もあるしな」
そう言うと『ギラファ』は目くらましの煙を吐き、何処かへ飛び去った。
『ギラファ』が立ち去ったのを確認すると、『テンテン』たちが戻ってきた。
「逃げ出すのも早いものだ」
ミヤマが大あごを『カチカチ』と鳴らした。




