きつねさん
――ゆめを――みました――
幼稚園……いや、もっと小さい保育園の頃だったと思う。本土ではない南の方の暑い暑い地域でした。遠足で何故か防空壕を見に行くなんていう、とんでもない予定を保育園は組んでました。
でも、私はどーしても入りたく無かったんです。防空壕が怖くて怖くて。入口のすぐ近くまで来て泣きじゃくる私。すぐ終わって戻って来るから……と、母はまだやっと歩ける位の小さな弟を抱っこし、先生達と防空壕へと降りていきました。
わたしは何がこわいのか分からずに泣いていました。すると、すぐ真横の切り株の上で何かの気配がしました。白い――なにか。
白くてふわふわしたものは、わたしをじっと見ていましたが、口にくわえていた草を渡し、そのまま……まばたきする間も無く目の前からきえました。あわてて切り株をペタペタしても、そこは当たり前の様に、元から切り株でした。
程無く戻って来た母に、手に持ったそれを見せたらススキの穂。私はそれを手渡しながら、さっきまでの不安はどこへやら笑っていました……
「……というですね、夢をですね、見たんですよ。あ、それ私まだ食べてないです」
柚子味のお稲荷さんを取ろうとした手を遮る。食べ物の戦いはシビアなんです。そもそも買って来たのは私。
「いや〜、しかしよくよく縁があるんだねー」
うちの近所の神社で、食べられない方の御稲荷様と、お稲荷を食べる。ややこしい。何故かスーパーで大安売りだったのです。何種類味があるんだろ。
「次はこの味かな。人間も色々思い付くよね」
以前名刺をくれた、ぐだり狐さんは今日も冴えない顔をしている。萌えを押し出す戦略は採用しなかったのかな。
「まぁ、わらわは嫌いではないぞ」
当たり前の顔して突然出てくる美人狐様。今日も九本の尻尾はせわしない。あそこらだと管轄は誰かのう……なんて言いながらパクパク食べていく。今日もうちの近所は平和です。
夢の内容は私の実体験です。信じるも信じないも自由です。多分、一番古い狐の記憶。