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パトリシア・チェラストラ  作者: 蒼井 涼
2/3

引金

  ◆

 父、ジョナサンが亡くなって一週間が経った。

 未だ戦争は続いてはいるが、以前に比べると比較的穏やかになった。おかげで暮らしやすくもなり、少しづつ平和な生活が戻ってきた。

 父の戦死を知った母と、まだ知らないステラの新しい生活が始まった。しかし、母のミーシャはまだ愛人の死を全て受け止めきれておらず、精神的に不安定な部分もあった。


 それから1年、なんとかミーシャは耐えれるようになり、息子のステラをしっかり食べさせてやれるようにもなった。パートを入れたり料理を作ったりと、ミーシャはシングルマザーとして立派になった。

 そしてステラが12歳になったある日。夕食を食べ終わりミーシャが皿洗いを終え、ステラがリビングでテレビを見ている時だった。

「ステラ—―、おふ、ろ・・・・・!」

バタン、という音とともにミーシャは崩れた。

「母さん!どうしたの?!」

ステラは慌てて駆け寄る。

「ふぁ…ファガ、ンを……私の財布の……な、中に…番号が……」

 ステラは何かわからないままファガンと救急車を呼び、ミーシャは救急車で搬送され病院で入院するも、2日で容態が悪化し亡くなってしまった。死因は過労死。ミーシャは働きすぎのストレスを溜め込んだまま生活していたため、疲れ果てた体が限界を迎えた。



 ファガンはずっと傍で見守っていた。

 ミーシャの夫の『通知』を送った後、何かしら相談したり手伝ったりしていた。時には仕事探し、時にはステラの子守り。彼も彼なりに忙しかったが人のためを思いやり動いてくれていた。ミーシャの意識が薄れていくにつれ、ファガンの呼ぶ声は大きくなっていった。呼びもどしたかったのだ。しかし彼女が戻っても余計疲れてしまうし酷くなるだろうと考えていた。だから、こうなる前に、話はしていた。


『ファガン?あのさ、私もしもこれから働いたりして忙しくなって、ステラを世話できなかったら、ファガンにステラを頼みたいの。…いいかしら?』


『まぁ僕も郵便屋ですしそれなりに暇ですよ。極力手伝います。』


『ありがとう。男の子同士話せることもたくさんあるでしょう。助かるわ。』


しかし…ファガンは予測していなかった。


「なんで。なんでミーシャまで!せめて戻ってこいよ、僕が2人を見守ってあげるからさ……!ステラの大切な存在がいなくなるじゃないかッ!!!」

 ファガンが泣くのを我慢し冷たくなってしまったミーシャに問いかけても、答えは返ってこない。

 ファガンはステラに両親のことを、ステラが物心つく前の出来事を全て話すことにした。隠すことなく、しっかり受け止めて強い子になってもらうため。



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