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「病についてもう少しだけ聞いても良いかしら?」
「もちろんです」
「今、病にかかっているの男は何人いるの? それと一番最初に目が覚めなくなった人は解るかしら?」
「ギルドで把握している限りで四十三名です。 そしてほぼ毎日一人か二人ずつの割合で増えています。 一番最初に目が覚めなくなった方ですが、町の西部にある三番区域、八番通り近くのランスターさんと聞いています」
今度はしっかりとこちらを見て話す彼にフィーネは笑みを見せる。
「石の鑑定も素晴らしいけど受け答えもしっかりしているのね」
褒められた彼は照れ笑いを浮かべながら謙遜の言葉を返した。
「でもひとつ欲を言わせてもらうと、ハンターには町を渡り歩く者も多いの。 ましてや今は近隣に応援を要請しているのでしょう? 町に疎い人も多いはずよ」
フィーネに指摘され何かに気がついた彼はすぐに紙とペンを取り出し、彼女の目の前で地図を書き始めた。
大雑把ではあるが線で道を表し、丸で目的地を描き記す。
「良くできました」
フィーネは描き終えたばかりの地図を摘み取ると踵を返した。
「二人とも、早速この家に行ってみましょう」
彼女の提案にマリアンとリルは大きく頷いた。
歩き始めると、鑑定士の彼が慌てて声をかけてくる。
呼び止められたフィーネは不思議そうに振り返った。
「何か伝え忘れたことでもあるのかしら?」
「いえ…… そういう訳では無いのですが……」
「悪いけど、私たち時間がないの」
フィーネが一蹴すると、まごついていた彼は意を決して続きの言葉を紡いだ。
「……また、お会いできますでしょうか?」
一瞬呆気に取られたフィーネだったが、直ぐに相手の発言の意味を理解すると不適な笑みを浮かべた。
「もう来ないかも知れないわ」
「そう、ですか…… なら、せめてお名前を」
「名前? 私の名前はフィーネよ。 覚えておいてね、若い鑑定士さん」
フィーネはわざとらしく彼に向かって片目を瞑ってからギルドを出た。




