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「別に気にしたことないわ」
「それを聞いて安心しました」
「そんなこと聞くなんて何かあったの?」
「私の勉強が足りないのか、若いお前に正確な鑑定などできるはずがないと仰るハンターさんもいらっしゃるので……」
「それは大変ね」
小娘が言うことは強ち間違ってはいないのね。
「でも、こうして窓口で構えているんだから、ちゃんと鑑定士の資格は持っているんでしょう?」
「もちろんです」
「なら、堂々としてれば良いのよ。 頭の悪いハンターなんて気にしちゃダメ」
苦笑いを浮かべながら話を終えた青年鑑定士は再び目の前の石に集中する。
黙々と石を選りすぐっていく彼をしばらく見つめていたフィーネは、鑑定が終わるころを見計らい気になっていたことを尋ねた。
「ここのギルドって女のハンターが多いけど、何かあったの?」
「……そうなんです」
隻眼のレンズを置いた彼は、おもむろに口を開く。
「実はこの町では一月程前から奇妙な病が流行っておりまして、若い男性が少ないのです」
「それってどんな病なの?」
「それが…… 信じられないかもしれませんが、眠ったまま目を醒まさなくなる病なんです」
彼の言葉にフィーネの後ろで話を聞いていたリルとマリアンが同時に驚きの声を上げた。
「それにしても皆さんは素晴らしいハンターですね。 どれも良質な石ばかりです」
こちらを見ることもなく話をしながらテキパキと石を数え、金額を算出していく青年。
その行為は、誰もが一目置く私が目の前にいるのにと考えるフィーネには面白くなく、わざと前屈みになって顔を寄せる。
「褒めてくれるのは嬉しいんだけど、病の話を続けてくれないかしら?」
「はい。 かしこまりました。 ……って、顔が!」
突然机に出来た影に訝しみ彼が顔を上げると、目の前には彼女の顔があった。
驚きと恥ずかしさのあまり視線を落とすと、今度は彼女の豊かな胸が視界に入る。
見る見る内に顔が赤くなり今にも顔から湯気を出しそうな鑑定士の彼を見て、フィーネは満足そうに微笑んだ。




