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「次に…… これはちょっと特別で高価な拡声の精霊石です。 自分の封じた声が大きくなって解き放たれるです。 普通に叫ぶよりも大きな声で助けを呼べるですよ!」
「そのような物まであるのですね。 それも先ほどの石と同じように使えばよいのですか?」
「これは風の精霊石なので、呪文では風の精霊に呼びかける必要があるです。 それから、使う前に自分の声を封じておく必要があるです。 こうするです」
リルはわざとらしく一つ咳払いをすると緑色の石を手のひらに乗せ、顔の高さまで持ち上げた。
それから小さく呪文を唱えた後、深く息を吸い込むと石に向かって力の限り叫ぶ。
目の前にいたマリアンはその様子を不思議そうに眺めていた。
「……リルさん? もしかして今何か叫んだのですか?」
「叫んだですよ! マリーさんが聞こえなかったのは精霊石がリルの声を封じたからです」
「とても不思議です」
「納得していただいたところでマリーさんも声を封じるです。 呪文は『音を司る風の精霊よ、我が声を封じるです』です!」
軽く手渡された石を受け取ったマリアンは恥ずかしそうに周りを見渡す。
「人が大勢いらっしゃるところで大声を出すのは気が引けます」
「誰にも聞こえないですから大丈夫です」
「呪文を間違えたら?」
「呪文を間違えたら石は声を封じてくれないので、周りに響くです。 でも大丈夫ですよ、ブライトだって失敗したことないです」
「そ、それは逆に追い込まれた感じが……」
「マリーさんは心配しすぎです。 気楽に叫んでみるです。 封じる声が大きければ大きいほど解き放った時の声も大きくなるから、頑張って声を出してくださいです」
「が、頑張ります」
一つ息を飲んだマリアンは呪文を唱えようとしたが、ふと気になることができて一旦口を噤んだ。
「リルさんは何と叫んだのですか?」
「それは、もしもの時のお楽しみです! そんなことより早く封じてくださいです。 日が暮れると更に暗い路地になっちゃうです」
「それはそうですね」
マリアンはリルに急かされ意を決すると教わったとおりの呪文を口にする。
続けて持てる勇気を振り絞って石に向かって声を張り上げた。




