~ 5 ~
「マリアンって怒ると怖いわね」
「リルもそう思うです」
ギルドに向かいながらフィーネとリルは小声で囁き合っていた。
しかしマリアンはそれをしかと聞いており、とても落ち着いた口調で「二人とも、何か言いましたか?」と問うたのだが、恐ろしいほどの凄みが全身から溢れ出ていた。
「リ、リルは何も言っていないですよ」
「嘘をついたらミカエリス様に怒られますからね?」
「解ってるです。 ……っていうか、今十分怒られている気がするです」
張り詰めた空気の中ようやくギルドにたどり着いた三人が早速扉を開け中に入ると、一目で雰囲気が違うのが解った。
ハンターは元来、危険が伴う職業で男性が生業とすることが多いのだが、ここでは女性のハンターが目立っている。
「明らかに訳ありね」
ギルド内の様子にフィーネの表情も引き締まった。
彼女は三つある換金窓口の中から一つの窓口を選ぶと、悪魔を封じた精霊石が入った小袋を無造作に置く。
後に続いたリルは鑑定をする相手を見て思わず声を上げ、前にいるフィーネに小さな声で話しかけた。
「フィーネ、鑑定士はなるべく老人の方が良いです。 経験の浅い人だと、きちんと石の価値を見分けられないです!」
「私は若い男が好きなの」
「……あの、拝見しても宜しいでしょうか?」
窓口の前でもめようとする一行に鑑定士の青年は不安そうに尋ねてきた。
「ごめんなさい、お願いできるかしら?」
フィーネが笑みを浮かべながら答えると、青年は早速石を一つ手に取り隻眼のレンズを覗き見る。
手際良く見定めていく彼にフィーネは顔を寄せた。
「あなたってまだ十代よね?」
「はい」
彼は一瞬彼女と視線を合わせたが、すぐに外して短い言葉で答える。
「……若輩者の鑑定ではご不満ですか?」