~ 3 ~
三人が部屋に入るとレイヴァンは静かに寝息を立て、ブライトは締まりがない笑みを浮かべながら眠っていた。
「お二人共、気持ちよさそうに眠っているようにしか見えませんが……」
「でも、何度呼び掛けても起きないんです」
リルは主人の傍らに立ち二度三度と身体を揺すってみせる。
それでも彼は目を覚まさなかった。
「確かにおかしいわね。 レイヴァンならすぐに気配を感じて起き上がりそうなのに……」
フィーネもリルを真似てレイヴァンの横に移動すると、そっと掌で彼の頬に触れる。
「警戒心の強い彼が、こんなにも無防備だなんて……」
彼女は思わず口元に笑みを浮かべた。
そしてそのまま彼の顔に自分の顔を近づける。
「どさくさに紛れて何してるんですか!」
二人の唇が重なろうとすると、それよりも早くリルが彼女の髪を掴んで顔を上に持ち上げた。
「ちょっと痛いじゃない! 何するのよ!」
「それはリルの台詞です! ご主人様の唇を奪おうなんて絶対に許さないです!」
「単に目覚めのキスを試そうとしただけでしょ!」
「……目覚めのキス?」
「何よ、あんた子供のくせに、お伽話を知らないって言うの?」
「知らないです。 ……って、リルは子供じゃないです!」
「似たようなものじゃない」
「断じて違うです! それよりも、その話を教えろです!」
「何で私があんたなんかに教えなきゃいけないわけ? マリアンにでも聞けば良いでしょ?」
「言われなくても聞くです! マリーさん、教えて欲しいです!」
頬を膨らませたリルが物凄い剣幕でマリアンに詰め寄ると、彼女は驚きながらもゆっくりとした口調で説明を始めた。
「目覚めのキスと言うのは恐らく『眠れる王子様』と言うお話に出てくる一幕だと思います。 悪い魔女さんに呪いをかけられ覚めることのない眠りについた王子様。 それを、隣国からやってきたお姫様がキスをして呪いを解き、王子様を目覚めさせるんです」
「なんと!」
リルはマリアンの話を聞いて目を輝かせた。