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「話して頂けるのですか?」
「はいです。 でも、ちょっと恥ずかしいので……」
リルは座っているベッドの横を軽く叩いた。
「隣で聞いて欲しいです」
大きく頷いたマリアンが早速指定された場所に腰を下ろすと、リルはゆっくりと話し始めた。
「リルには昔、今のご主人様とは違うご主人様がいたです。 でも、リルはそのご主人様のことが大嫌いでした。 とても怖い人だったからです。 昔のご主人様はリルが失敗すると鞭で叩いて怒るです。 それに暗い部屋に閉じ込めるです。 あと、ご飯はいつも少しのミルクと食べかけのパンばかりで、失敗した時は無しになったです」
発せられた言葉に耳を疑ったマリアンが思わずリルに顔を向けると、彼女は慌てて顔を背ける。
「恥ずかしいから、こっちを見ないで欲しいです」
「ご、ごめんなさい」
言葉の意味に気づき慌てて前を向き直すと、マリアンは恐る恐る彼女に尋ねてみた。
「その失敗と言うのは?」
「リルは人前でご主人様の言われた通りに動かないとダメだったです。 それができないと失敗になるです。 ……リルは見せ物だったらしいです」
「見せ物?」
「猫に変わることができる人間は珍しいからお金儲けの道具にされたのだろうって、後でブライトに教えてもらったです。 でも正直なところ、その頃はお金儲けとかよく解らなかったです。 ただ皆がリルを見て驚いたり笑ったり……
最初はそんな生活が当たり前だと思っていたです。 でも、ふと気がついたです。 目の前の柵を挟んだ向こう側で、楽しそうにしている人がたくさん居るって。 リルとはまったく違う生き方をしている人が、たくさん居るって。 それからは自分も今とは違う生き方をしてみたいと思うようになったです。 毎日毎日思って、ある日ご主人様に話したのです。
……でも、お前は俺の奴隷なのだから、そんな事は考えずに言われたとおりに生きていれば良いと言われたです。 その時はとても不思議な気持ちでした。 何故か周りが暗くなったような気がしたです。 それからのご主人様はもっと怖くなってリルを毎日鞭で叩くようになったです。 リル何も失敗していないのにですよ?」
「リルさん……」




