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これにて一件落着とばかりに三人は息をつき沈黙が訪れようとしたが、何かに気がつくと一斉に顔を見合わせた。
「ち、ちょっと待ちなさいよ。 何で小娘が私の見た夢の話にすんなりと横槍を入れられるわけ?」
「マリーさんだって普通に返事をしたです!」
「私も違和感無く返事をしてしまいました」
眠気は一気で吹き飛んだ。
「……いったいどういうこと?」
フィーネに鋭い視線で睨まれたマリアンだったが、何も解らない彼女は無言で首を横に振った。
「……まさか三人が同じ夢を見たとでも言うわけ?」
「そんなことあり得るのでしょうか?」
「きっとご主人様が眠り続けていてリルたちの相手を出来ないから、その代わりに夢に出てきてくれたとリルは推理するです!」
「また、いきなり訳の分からないことを! あなたは黙っていなさい!」
「リルだって考えてるです!」
「それなら何でレイヴァンとマリアンが抱き合う場面を見るのよ! 夢なら私と抱き合うところを見たいわ!」
「ですから、レイヴァンと抱き合っていたのは私ではなくミレーニアさんです!」
力説するマリアンだったが、フィーネにはそれが何より不可解だった。
「既に忘れただけかもしれないけど、私はレイヴァンが彼女をミレーニアと呼んでいたという記憶がないわ」
「リルはご主人様の名前がいつもと違ったような気がするです!」
「百歩譲って夢に出てきたのがあなたと瓜二つな人物だとして、そのミレーニアってのは何者なの? 私、そんな人知らないわよ?」
「リルも知らないです」
「見たことも聞いたこともない人間の夢を見るなんて明らかに変じゃない?」
「……確かにそうですよね」
「マリアン、あなたは名前を知っているみたいだけど、その娘のことを知っているの?」
「いいえ、私もお会いしたことは一度もありません。 夢でレイヴァンがそう呼んでいたのを覚えていただけです。 ただ……」
続きを口にするのを躊躇ったマリアンはフィーネに睨まれた。
無言の圧力に屈し、眠るレイヴァンを見つめ心の中で謝ると、覚悟を決めて話を再開させる。
「ミレーニアさんはレイヴァンのとても大切な人だったそうです。 その方の仇を討つために旅をしているのだとブライトさんが話してくれました。 そしてミレーニアさんはとても私に似ているそうです」




