~ 14 ~
花を生けた後、三人は二階の部屋へと案内された。
扉を前にして主婦は一瞬躊躇いを見せる。
「あまり驚かないでくれると嬉しいわ」
そしてノブに手をかけながら小さく呟いた。
三人は彼女が呟いた言葉の意味が解らなかったが、扉の奥へと足を進めるとすぐに理解した。
日の差し込む暖かな部屋。
ベッドの上で眠る彼女の息子ランスターが異様な状態であることが一目で解った。
「あなたの息子っていったい何歳なのよ?」
「どう見てもお爺ちゃんです」
「一ヶ月間眠り続けていると伺ったのですが……」
驚きのあまり言葉を失っていた三人だったが、我に返ると各々口を開く。
主婦は憂いに満ちた表情を見せ、フィーネたちに向かって頷いた。
「間違いなくこの子は私の息子。 今年で二十二歳になるランスターよ」
「これで二十代……」
フィーネは未だに信じられず眠る彼の手を取った。
皮膚は垂れ、刻まれた皺は老いた証。
とても自分と同じ年代とは思えない。
「いつから?」
鋭い視線で主婦を睨むと彼女はすぐに答えを返す。
「いつからと言うわけではないのですが、日に日に老いてこの様に」
「食事ができないから痩せたのでしょうか?」
「老いるのと痩せるのは全くの別物でしょう」
「このままだと、ご主人様もお爺ちゃんになっちゃうです!」




