~ 12 ~
「眠り続ける息子に会ってどうしようと言うのです」
「それは……」
流石に付焼刃での会話には無理があった。
返事に戸惑うマリアンに代わってフィーネが再び前に出る。
「別にあなたの息子の命を奪いにきたわけではないから安心して」
彼女の言葉に主婦は核心をつかれた表情を浮かべ、マリアンは余りにも唐突な発言に驚きの声を上げた。
「フィーネさん、いきなり何を!?」
「とりあえず断りを入れたまでよ。 不治の病となれば感染の拡大を恐れ発病者を殺し、火葬する手段が取られることもある。 あなたの格好を見れば最期を看取るために遣わされた修道女に見えなくもないわ」
「私たちはそのようなことをしにきたのではありません!」
「だから、そう言ったんじゃない」
思わず声を荒げたマリアンは指摘されると、勘違いしたことに気がつき頬を赤らめる。
彼女が大人しくなったところでフィーネは話を戻した。
「私たちは眠り続ける病の原因を突き止めて仲間を助けたいの。 その為には少しでも情報が欲しい」
「申し訳ないけど今までに何人ものお医者様に診ていただきましたし、ハンターたちにも話をしてきました。 それでも何一つ解決に繋がっていません」
「悪魔祓いは試したの?」
「もちろんです。 悪魔が関与しているかもしれないと情報があってから直ぐに神父様に来ていただきました。 でも効果はありませんでした」
彼女の言葉にフィーネも残念そうな素振りを見せるが、瞳の光が消えることはなかった。
「あらゆる手を講じたのは解ったわ。 でも、悪いんだけど私は自分の目で確かめないと気が済まないのよね。 それに私はこう見えて毒に詳しいの。 あなたの息子が毒に冒されていないか、確認させてくれないかしら? それだけでも手がかりになると思うの」
艶やかな服をまとった女性に、いきなり毒の知識があると言われても怪しさが増すばかり。
丁重に断ろうとした主婦だったが、それよりも早くマリアンが続いた。
「小母様、僅かな時間で結構ですからお願いいたします。 私たちの仲間と何が違うのか、或いは何か共通する点があるのか、確認させて下さい!」




