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異世界へ

またお気に入り登録が増えていました。

ありがとうございます。


 真っ白な光に包まれながらディズレイリは楽しかった、けれどもっとあの世界で過ごしていたかった、と思っていた。眩しさがなくなったので目を開けてみると、そこは何もない真っ白な空間で彼一人しかいなかった。


「どういうことじゃ?まだ何かあるのかのう。…うん?」


 目を開けたら病院とかではなく、わけのわからない空間だったことに多少の嬉しさを感じていたら、遠くから誰かが近ずいてくることに気が付いた。その誰かは遠目にもわかる豊かな金髪に豪奢な衣装、そして何よりも彼女自身が輝いているのだ。


「あなたがゲームをクリアしたディズレイリかしら?」


 見惚れているうちに近ずいて来ていたその女性。近くで見るとその美貌はこの世のものとは思えないほどだ。キリッとした眉におそろいの切れ長で空色の瞳、きれいな鼻筋に形の整った薄くしかし柔らかそうな唇。ディズレイリがあと30歳若ければ緊張し何も喋ることができなかっただろう。


「いかにも。お主、人ではないじゃろう。神様かの?」


 その言葉を聞き目を丸くして驚いた様子で、


「正解、よくわかったわね。神気が漏れているのかしら。とにかくあなたに頼みたいことがあるの。聞いてくれるかしら?」


そう楽しそうな声で言い首を傾げる姿は、冷たい印象とのギャップがありとてもかわいらしく感じる。


「神様の頼みとあれば聞かんわけにはいかんのう。」


ディズレイリも楽しそうに答える。が目は真剣そのものである。

その目を見てクスリと笑い言う。


「そんなに警戒しないで。今すぐあなたをどうこうするつもりはないわ。それにしても魔物と戦っているときは笑顔なのにそんな顔もできるのね。」


「儂はもともと気は短いほうでの、温厚というわけじゃないんじゃ。ただ戦っておると昔のことを思い出して楽しくての。」


「あなたの昔は気になるけど教えてくれないでしょうね。まあいいわ、本題に入らせてもらうわね。私はあなたが見破ったように神よ、と言っても異世界の神なんだけれど。あなたには私の世界を救ってもらいたいの。」


 笑顔を消し真剣な顔で頼みを言う女神。ディズレイリは顎に手をやり、少し考えてから言う。


「幾つか疑問に答えてもらえるかの。このデスゲームを仕掛けたのはお主じゃろう。なぜ攻略は一人だったのじゃ?そしてデスゲームの理由は?」


「答えは簡単。まず異世界につれていけるのは一人だけだから、一人で攻略できる人じゃなきゃいけなかったの。もちろんその中で一番強い人をね。デスゲームにしたのは命を危険に晒すことで本気になってもらいたかった。あと命の取り合いに慣れて欲しかった。あと…その…なんていうか……憧れてたの!!」


「は?」


顔を真っ赤に染めて恥ずかしがる姿には、くるものがあるが最後の理由が解らない。予想外だったのかディズレイリも間抜けな声を出してしまった。


「この世界に来て資料を集めていたら、その中にそういう小説があってすごい面白かったの。それにいいアイディアだと思ったし…だから、ね…やっちゃった。」


焦って説明し最後に舌を出して言う女神にディズレイリは、怒って拳骨を落とす。


「馬鹿もん!そのせいで何人の人が犠牲になったと思っておるのだお主は!!」


「痛い…神様を殴るなんて、嘘嘘ごめんなさい。でも一人も死んでないわよ!」


神に対する無礼を説こうとするも、ディズレイリの顔を見て急いで謝る。そして聞き捨てならないこと聞いたディズレイリは問いただす。


「死んでないだと、どういうことじゃ。」


「どう言えばいいのかしら、彼らは寝ているのよ冬眠みたいなものね。クリアされるまでのね。」


「ふむ、お主と話しておると疲れるのお。それで頼みとはなんじゃ。」


女神に最初の冷たい印象はすでになく、ディズレイリは疲れたといわんばかりに肩を落とす。


「私の世界は今バランスが崩れてきているの。このままじゃそう遠くないうちに崩壊するわ。原因は四方に配置され世界を見守りバランスを守る四つの元素、四属性の大精霊が封印されてしまったからなのよ。封印を解くには封印を守っている魔物を倒さなければいけないのだけれど、最高レベルは700弱の住人達じゃとてもじゃないけど無理なの。だからあなたの力を貸して。」


「その世界とはどのような世界なのじゃ?」


「<Save World>と地形、国と街の名前に場所すべて一緒よ。ただサブ職業がないから気をつけてね。あと最後の戦いで”闘仙”の熟練値がたまって条件を満たしたから”仙人”になれるわね。」


「ほう”仙人”とはどのような職業なんじゃ?」


女神の言葉を聞き、何かが琴線に触れたのか目を輝かせて問う。


「えっと”闘仙”と違ってオーラを使い結界を張ったり、簡単な治癒をしたりあと簡易瞬間移動ができるわね。あ、でも”仙人”だけあって寿命が千年になっちゃうみたい。」


その言葉を待っていたと言わんばかりに両手を天にかざし喜ぶディズレイリ。


「是非仙人にしてくれ。二、三百年森の中に住み、街に出てきて時代の差を感じるというのに憧れとったんじゃ。」


その変わった憧れに若干引きつつ、異世界に旅立ってくれるか最終確認を行う。


「そ、そう。じゃあ私の世界を救ってくれるのね。」


「うむ!なんだったらその封印を行った奴も倒してやろう。」


「それは大丈夫。私がもう退治したから。」


テンションの上がったディズレイリの申し出を呆れた様子で断る女神。それに疑問を持ったディズレイリは問うてみる。


「神とは世界に干渉できんのではないのか?」


「ええ普通はね。でもそいつがわざわざ私に会いに来たのだから見逃さないわ。」


舐められたと思っているのか少し機嫌が悪くなる女神。それを特に気に留めずさらに質問をする。


「ゲーム内の金銭はそちらの世界で使えるのかの?」


「え、何、お金?ええ使えるわよ。まだ他に聞きたいことはあるかしら。」


質問されたことにより冷静になり、まだ確認したいことがあるか聞く。ディズレイリは少し考え何か思いついたのか笑みを浮かべる。


「最後に一つだけあるのお。あなた様の御名を頂けますかの?」


ウィンク付きで名前を聞かれ嬉しそうに微笑み、背筋を伸ばし、豊かな胸を張り、威厳を出して清らかな声で答える。


「ディズレイリ・グラッドストーン、いいえ佐久間五郎、あなたに我が名を与えましょう。神々の一柱にして世界アトラスを司り、すべての精霊を束ねし我が名は”セレナーデ”。あなたの旅路が実りある豊かであることを、そして何者もそこに影を落とさぬことを祈ります。」


「確かに。しかし佐久間の名はもはや捨てた名じゃ。これからはディズレイリとして生きていくんじゃからディズレイリと呼んでくれんかの?」


元の世界との縁をあっさり手放すディズレイリに、少し悲しそうにしながら女神が問いかける。


「未練はないのですか?自分で言っておいてあれですけど無理を言っていることは解ります。」


ディズレイリはどこか遠くを見るようにして頭を振ってから言った。


「儂は一人身じゃし親類もおらん。仕事を辞めてからはずっと死に方を探しておったんじゃ。するべきことはすべてしたし未練はないのう。むしろ物語の中のことじゃった世界に行けるなんて感謝したいくらいじゃ。」


さっぱりした顔でそう言うディズレイリに女神も納得し柔らかい笑みを浮かべる。


「では私の世界を頼みますよディズレイリ。街の近くに送りますからね。四大精霊の居場所は分かりますか?」


「予想はついておる。任せるのじゃ世界を救って見せようぞ。」


そう言うと同時にディズレイリは光に包まれる。彼が最後に見聞きしたものは、いたずらっ子の笑みを浮かべた女神とその言葉。


「あなたが世界を救ってくれたら死んだときに私の伴侶にしてあげましょう。」










目を開けるとそこは森の中だった。


「あの女神は本気なのかのう?」


とディズレイリは苦笑し、異世界で最初の一歩を踏み出した。

異世界あれ?

一歩しか歩いてない。

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