4th Day:例えるなら魔王VS勇者(LV.1)。
「マジで!!?」
「うん。昨日メール来た。」
今日は日曜日。一週間で最も素晴らしい日。夏澄も由美も山口先生もいない…………つまり、俺を困らせるのは母さんしかいないという素晴らしい日だ。NiceSunday!!!………なのに………!
「冬姉が帰ってくるのか………」
「うん。そうじゃなきゃこんな早く起きないよ。」
………もう10時だけどね。雪奈は朝が弱いからな。雪奈にしては早く起きたほうだ。しかし冬姉が…………!冬姉とは俺たちの実の姉で、本名は柚木冬美。現役のモデルだけにスタイルは抜群だが、性格は悪い(俺にだけ)。
「あら、冬美ちゃん、帰ってくるの?」
「うん。そろそろ来るんじゃない?」
「あら、楽しみ〜。」
今日唯一、俺を困らせるはずの母さんも………冬姉の前では霞んでしまう。
「葵ちゃん、お洋服買ってきたの!」
スカートを見せる母さん。
「着ねえよ………」
かまってられねえ………!
「雪奈ちゃん………葵ちゃんが冷たいわ………!」
いじける母さん。
「あっそ。」
「………」
冷たく返す雪奈。………雪奈に同意を求めたのは間違いだったな。俺より冷たい、というよりめったな事には関心を持たないからな。
「冷たい………冷たいわ!二人とも!!」
「普通だろ。」
「うん、普通。」
「…………二人でいじめる………悠くん早く帰ってきて………うわ〜ん、さみしいよ〜〜!」
本格的にいじけ始めた。めんどくさ………
「たっだいま〜〜!!!」
………この声は………!
「冬美ちゃ〜〜〜ん!!!おかえり〜〜〜!!!そして助けて!葵ちゃんがいじめるよ〜!」
俺だけ!?雪奈は!!?
「………」
雪奈を見ると素知らぬ顔して漫画を読んでいる。………このやろー!ドタドタと足音が近付いてくる。
「葵〜!」
「ぐはっ!?」
足音の主、父さん譲りの茶色の癖っ毛に、母さん譲りの蒼い瞳のその人………冬姉は帰ってくるなり俺をどついた。………ってぇ(泣)!!!
「母さんを泣かすとはどういうことよ!」
「ぐへっ!?」
もう一発………痛い(泣)!
「まったく!この際だから教育しなおしてやるか………」
首を掴まれて揺さぶられる。……し、死んでしまう!!!
「冬姉、その辺にしとかないと葵兄死んじゃうよ?」
「いいのよ。馬鹿は死ななきゃ治んないんだから。」
「ふーん。」
良くねぇ!!!そして雪奈も『ふーん』じゃなくて助けてくれよ!………てか、本当死ぬ………!あぁ………意識が…………ここで俺の意識はブラックアウトした。
「次はどうしよっか。」
「う〜ん、そうねぇ………これなんかどうかしら、冬美ちゃん。」
「………」
………なんだこの状況………。
意識が戻ると、そこには難解な状況が出来上がっていた。
場所は確にさっきいたダイニングだった。
ただ、さっきまでと違うのは、いたるところに積み上げられた洋服の山。部屋一面服服服、服だらけだ。その洋服の山を母さんと冬姉があさりながらあれこれ言っている。ただ一人雪奈だけがさっきまでと変わらず漫画を読んでいる。………ページの進み具合いから見て、気絶してたのは30分ぐらいか………
「じゃあこれで………あら、葵ちゃんおはよう♪」
ご機嫌で挨拶する母さん。………おはようじゃねえよ!てか、なんでそんなにご機嫌なんだ?
「起きちゃったか…………チッ!」
舌打ちした!!酷くねぇ?気絶させておいて、気が付いたら舌打ち!?
「………ん?」
よく見ると冬姉の手にはデジカメが握られている。………散乱する女物の服と冬姉の手のデジカメ…………まさか!!?
「やっぱり………」
自分の体を見てみるとそこにはフリフリのエプロンドレス………いわゆるメイド服。
「何してくれてんだーーー!!!」
「葵の着せかえ兼、母さんが買ってくる葵用の服の整理。及び写真撮影よ♪」
冬姉はにこっと笑ってデジカメを構え、シャッターを切る。………悪魔だ。
「いや〜楽しかったわ〜♪」
満足そうに笑う母さん。楽しかったわ♪じゃねぇっての!この大量の服はどこから出てきたんだ………てか、よく見たらメイド服だけじゃなくてナース服やらセーラー服やらまである。………なに考えて買ってきてんだ!!!
「これでまた一つ弱みが増えたわね♪」
笑顔でとんでもない事を言う冬姉。
「言うこと聞かなかったらこの写真、実名付きでネットに流すから♪」
………そこまでしなくても………(泣)
「ちゃんと言うこと聞くのよ。」
ふふふ………と、我が家の魔王は残虐な笑みを浮かべた。………俺が一体何をしたっていうんだ………
「………それでお仕事のほうはどう?」
あれから30分。すっかり部屋も片付き、母さんと冬姉は何やら話している。俺はというと、いまだにエプロンドレスに身を包んでいる………冬姉の命令で今日一日この家のメイドをやらされている。
「いい感じだよ。また表紙貰えたし。」
「あら凄い!頑張ってるわね〜。」
冬姉は今やカリスマモデルとして、有名になってきている。雑誌の表紙などでもみかける事が多くなった。………写真じゃ、性格までわからんからな………
「葵〜お茶。」
「………はい。」
「違う!返事は『少々お待ちくださいませ、ご主人様』でしょ!」
言えるか!てか、自分で言ってて恥ずかしくないのか?
「聞こえないのかな〜?葵、お茶!」
デジカメをちらつかせながら微笑む冬姉。………うぅ、魔王だ………
「少々お待ちくださいませ、ご主人様………」
「くくっ………あははははっ!!!」
自分で言わせといて笑うなよ!!!
「笑うなよ!」
「無理………ふふっ………!」
…………泣いていいかな?いいよね、この状況………
「葵兄、私も。」
「あら!じゃあ母さんにも♪」
「自分でやれ!」
なんで俺が………
「葵〜デジカメ♪」
「少々お待ちくださいませ………ご主人様………」
………この家に俺の味方はいねぇ………
「こんな家大っ嫌いだーーー!!!」
明日から一体どうなるんだろう(主に俺が)………これからの事に不安を覚えながら今日も過ぎて行くのだった………
今日のまとめ☆
魔王(冬姉)が帰ってきた!=家に安息の地がなくなった。
どうも、最近しんどいぺたです。肉体的に物凄いしんどいです………どうでもいいですか?どうでもいいですね。
と、いうわけで(?)今回はは冬姉が帰ってきました。短編を読んでくださったかたには再びですね。冬姉はこれからいろいろとやってくれると思います、多分(人事)。
評価・感想をいただけたら幸いですm(_ _)mそれではまた〜!
【2007/03/31】