1.少女、引っ越す
「明日から札幌に引っ越すぞ。」
突然のことだった。以前までも数年おきに、北海道内を転々と引っ越していた。今回も、それが来てしまった。
「はぁ〜。」
これまでにないぐらいの大きな溜息をついた。また引っ越すとなると、正直こちら側の身からしても非常に面倒くさい。学校も転校しなければならなくなる。そこでまた新たな人間関係を築き上げていくのが大変だし、転校の手続きだって、中学の頃とは違って様々な書類の手続きや、人数に空きのある高校もなかなか見つからないしで非常に大変だ。人数に空きのある高校なんて早々ない。しかも、高校では入学試験というものがある。途中から転入してくる人でも、入学試験を受験して、それに合格することは必須だった。
だから、人数が定員割れしている、自分の実力よりも遥かに余裕のある学校を選ぶ必要があった。幸い、学力に関しては今まで努力してきた。その分があるので心配いらない。私は適当に、引っ越し先から近い学校を選んだ。近いと言っても、自転車で30分ほどかかるのだが。夜間部の定時制のある学校もあって考えたが、生活リズムは整っている状態を維持したいのでやめ、全日制の底辺な公立高校に転校することにした。
なぜこのように引っ越しを繰り返しているのか。それは、私の父親に原因がある。物心ついた頃から父親は、毎晩のように女を家に連れ込んでは寝室から女の変な声が聞こえていた。数年おきに、結婚しては離婚してを繰り返していた。何度も母親が変わっている。今回も、なにか嫌な予感がしていた。
まともな父親ではないと前々から思ってはいたが、また今回の出来事で、もうこの父親は駄目だなと心の底から思った。親がこんなのだから、私が頼れる人なんてもういないのかもしれないと思って、少し絶望した。今まで、こんな家庭環境の中でも誰よりも真面目に生きてきたと思う。成績も常に上位だったし、部活や習い事なども頑張ってきた。自分の親を見ていたから、ああいうふうにはなりたくないと思う気持ちや、正義感や使命感があった。しかし、それもなぜこんなに今まで真面目でいたのか、よくわからなくなり、自分がどうありたいのかや、生きる希望を見失いかけた。今まで感じたことのない気持ちだった。
稚内から札幌の新居に移動する車の道中、午前2時。
車の振動に揺られながら、これまでのことや自分のあり方をただひたすら考えていた。




