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社会問題エッセイ

「先進国」になると少子化になってしまう理由

作者: 中将

◇「先進国」は共通して少子化に悩んでいる



筆者:

 本日は当エッセイをご覧いただきありがとうございます。


 今回は先進国共通の悩みである「少子化」はなぜ起きるのか? について考えてみようと思います。


 因みに参考データですが、世界全体の2023年の合計特殊出生率2.15人に対し、アメリカは1.62人、欧州は1.47人、日本は1.20、そしてアフリカは4.97人、ムスリムの出生率は3.1となっています。


 フランスは欧州の中では出生率が高い国ですが、これは移民を入れたからであり、

 移民も2世の出生率は元からいたフランス人とほとんど変わらないと言われています。


 一般的には出生率2.1を切ると人口減少のサイクルにゆくゆくは入ると言われているので、

 なんと世界全体で人口が減少し始める水準に2040年に入る前ぐらいになってしまい、2100年から世界人口が減少し始めると言われています。


 これは世界的に経済が豊かになっていくためだと言われています。



質問者:

 なんと……今は増えていますけど2100年ぐらいから減っていくという事ですか……。


 でも、先進国になって社会が豊かになっているのに人口が減るって一体どういう事なんでしょうか……。



◇権利を守ると出生率は下がる



筆者:

 複合的な要因が重なっているとは思いますけど、一番大きな世界的なファクターを2つ。

 日本的な要因を1つ説明していきたいと思います。


 まず一つ目は「人権意識の向上」です。


 特に女性に対する人権を手厚くし権利を拡張すると少子化は加速します。



質問者:

 え? どういうことですか?



筆者:

 西洋世界の1960年代に始まった出生率の低下は、経口避妊薬の登場、中絶の合法化、無過失離婚の広範な採用と同時に起こりました。


 また、それより前の重婚の禁止で「産むことのできない女性」を事実上「切りにくくなってしまった」のです。


 勿論、女性の人権や気持ちは守られるべきです。


 ですが、事実を並べてみれば「女性の権利と出生率はトレードオフの関係になっていた」のは事実です


 アフリカなどでは避妊や強制的な結婚など人権無視が出生率の高さに繋がっているのです。



質問者:

 それと、女性が仕事をするようになって近年下がったような気がします。


 結婚年齢が後になってしまうからでしょうか?



筆者:

 学生結婚する方が稀ですからね。

「仕事が安定してから」と思うとどうしても30代になってしまいますからね。


 あとは女性は結婚相手を選ぶ際に、自分よりも年収、学歴、社会的地位が低い相手と結婚するいわゆる「下方婚」をする割合が何と1割ほどしかいないと言われています。


 これもある種当たり前で、出産や育児をして自らのキャリアが止まってしまう(報酬は支払われるだろうが出世が遅れる事は間違いない)ので、それより稼いでくれる夫を求めるのです。



質問者:

 そう思うと、社会が発展し、人権について考えるようになった際に少子化が進行するというのは必然とも言えるわけなんですね……。



◇子供は「働き手」から「コスト」や「贅沢品」になってしまう



筆者:

 社会が未成熟であればもう未就学児のような年齢から働かされ、「労働力」として家庭に貢献します。

 また、医療が発達していないために障害を持って生まれる子供たちはすぐに亡くなったり「間引き」されることもあります。


 小さいうちから使える子供か使えない子供か、すぐ死ぬかどうか分からないために「とりあえず作っとくか」みたいな感じになります。


 しかし、社会が発達するとそうはいかなくなるのです。


 まず、医療が発達し幼少期に亡くなることがまずないために「出産=大人まで育てる」ような図式が簡単に形成されます。


 そして、出生時に亡くなることも減るために事前に避妊と言う考えにもなるために、

 「とりあえず作っとく」が大幅に減少します。



質問者:

 まずは、産まれる段階で厳選されるという事なんですね……。



筆者:

 こうした様相は子供は成人まで「親から守られる側」になります。

 両親がしっかりと子供を社会に出るまで育てることが社会的にも要求されます。


 「責任を持って社会に出る(高卒又は大卒)まで育てる」ということは、

 より良い教育を受けさせるようになります。


 すると1人あたりにしっかりとお金をかけようという発想になり「学歴社会」が進行します。

 

 これも本来は良いことであります。心身共に未成熟な子供が社会に放り出されることは減りますからね。


 ですが、出生率的には「子供がコスト化」してしまいマイナス要因として作用するのです。



質問者:

 確かに、日本・中国・韓国とアジアの学歴社会の国の方が出生率が低いですからね……。



筆者:

 中国や韓国は日本よりも壮絶な「学歴フィルター」らしく、就職すらままならないようですからね。


 このように家計にとってかつてはプラスになっていた子供は社会が発達すればするほど「コスト」になっていきます。


 

質問者:

 どうして学歴って重視されるんでしょうか? 学歴社会なんて無くなった方が良いと思うんですけど……。



筆者:

 僕もそうは思うのですが、

 学歴への評価は「後天的な努力」が伴っていると考えられているために完全には無くならないと思います。

 

 しかし、現実には学歴は親の年収とそれに伴う教育環境に大きく関わっていると言われています。

 (東大や医学部には年収1000万円以上が平均となっている)


 このように、親の年収が高い一握りしか子供を産み育てられないという事で「見えない階級社会」を生んでいると思います。


 ただ、権力を握っている側もその構造に密かに気づいているために中々これを壊したく無いのだと思います。

 「自分の子だけは良い思いをさせたい」上の人は思っているはずですからね。



質問者:

 制度を作っている人ほど権力構造を崩したくないと言う事はありますからね……。



◇SNSで「現実が可視化」



筆者:

 最後に「全世界的に出生率が低下」していることとして「SNSで現実が見えるようになった」事について挙げさせてもらいたいと思います。



質問者:

 どういうことですか?



筆者:

 これまで見てきた「子供のコスト化」「学歴社会化」の様相や「子育ての大変さ」はSNSを通じて見れば嫌でも情報を目にします。


 そのために「自分じゃ結婚や子育ては無理そう」みたいな考えが広がり自ずと「恋愛自主規制」をするようになっていくのです。



質問者:

 日本では交際経験のない大学生が34%いると言うアンケート結果もあったようですからね……。



筆者:

 今や、スマートフォンを持つ若者は地球上どこにでもいますからね。


 僕の感覚ですが世界で2.1を切る速度は予測されている水準よりも早く、人口減少スピードは思ったよりも早いのではないかとすら感じてしまいますね。


 また、ゲームやアニメなどの「理想世界の映像」に簡単に触れ合えるようになってしまいました。


 そのために例えばイケメンで高収入で優しくて家事や育児を手伝ってくれるような“理想的な”男性が現れれば、結婚したいという女性はたくさんいるでしょうし、


 男性側だって美人で甘やかしてくれて優しくて家事が出来る女性なら結婚したいと思うでしょうが、「供給側がゼロ」なんですね。


 現実的には「自分と同程度」の相手しか結婚できないという事を受け容れることが大事なのかなと思います。



◇少しずつでも改善する方法



質問者:

 結婚相手への要求ハードルも上がっているという事ですか……。


 一朝一夕ではこの少子化問題の解決は難しそうですね……。



筆者:

 ただ何もせずに手をこまねいている訳にはいかないですからね。


 何もせずに出生率を上げるためには法律を無視するような荒んだ国家になって、

 人権無視の性交渉を増やす事を容認する社会状況に逆戻りするか、

 移民を入れまくって既存文化が破壊されるかのどちらかを意味すると思います(現状は後者を政府は目指している)。


 ただ、逆を言えば権利を守ることが出来て出生率が改善すればこれほど良いことはありませんからね。


 今は「人類全体の成長のための移行期間」だと思うしかないと思います。



質問者:

 人権を守りながらも出生率が自然に改善することってあるんでしょうか?



筆者:

 一つ可能性があるとするなら、「学歴社会の崩壊」だと思います。


 将来的にはAIやVRを駆使することで見た目や生まれの家庭環境に左右されにくくなり、学歴関係なく活躍できる社会に自然になっていけば無理に大学に通う必要は無くなります。


 ただし、AIも間違ったジャッジをするのでその判断をする能力、AIに対して質問をする能力、選択肢の多い中から取捨選択する能力などは必要だと思いますので、能力の均一化までは至らないと思います。


 その能力の差が経済力や通う大学で開いてしまうと、結局状況としては変わらなくなってしまうのかなと思います。



質問者:

 現状でもグーグルなどで調べることができる能力で差が付いていますからね……。


 経済的な状況を埋めるためにはやはり政府が財政出動することでしょうか?



筆者:

 今は増税祭りで未来への展望が絶望的ですからね。

 

 1990年代と今の日本の比較ですが、


 世帯別可処分所得の中央値  約550万円 ⇒ 約410万円 


 退職金           2400万円 ⇒ 1500万円(大企業比較)


 消費税               3% ⇒ 10% 


 物価               全体的に約1.2倍


 社会保険料             8% ⇒ 10%


 厚生年金             10% ⇒ 18.3%


 介護保険              なし ⇒ 1.82%

 

 徐々に増税されて負担が増え、可処分所得は減り続けています(上記の可処分所得の数字は世帯別なので核家族化や高齢世帯増加も低下に大きく影響しています)。


 

 しかし一方で結婚前向き派の割合は、男性は40%前後、女性は50%前後と変わっていないのです。


 つまり、「結婚相手に高望みし過ぎ」又は「お金が無さ過ぎて結婚できない」のどちらかだと思います。


 大抵の調査で結婚できない1位は経済的理由なのでここを改善しないことにはままならないと思います。



質問者:

 今現在子ども家庭庁が仕事をしていないから少子化が進んでいるという批判についてはどう思われますか?



筆者:

 日本の少子化対策には7兆円以上支出がされていますが、これを完全にカットしてしまえば一気に出生率が1.0を割ると思うので全く無意味ではないと思います。


 一方で、直接ご家庭に支給するのではなく高校や大学にお金を出して「実質無料」とすることで家計の負担はイマイチ軽減されなかったり、


 産婦人科は出産の補助金の上がると同時に「便乗値上げ」を行い家庭に対する負担は変わらなかったりすることもあります。


 こうした「子育て支援」にかこつけた「金稼ぎ」やそれに伴って陰で行われている「利権」があるので、公益性でこれらを制限・取締りの徹底が必須であると考えています。



質問者:

 補助金が増えても同じだけ値上がりしたら意味が無いですよね……。



筆者:

 民間給与実態調査で2015年と2023年の25-29歳男性の平均給与は1.1倍増に過ぎないのに対し、20代で児童のいる世帯年収は同1.4倍近い増となっています。


 このデータは賃上げ以上に、結婚と子どもを持つ可能年収が上がっている事を示しています。


 子供を持つことのインセンティブは増えているように見えますが、「まだまだ足りない」というのが実情です。

 子供が成人するために必要な2000万円を分割支給するぐらいの気概が欲しいと思います。


 先進国化すればするほど、権利を守れば守るほど、少子化していくのはこれまで見た通りなので、それを補うだけの増税を伴わない財政出動を行う責務が国にはあると思います。


 ただ、お金だけで解決できない事もあると思うんですよね。



質問者:

 具体的にどういう事なんでしょうか?



筆者:

 やはり僕たち大人が「元気そうに過ごしていない」「幸せそうじゃない」事が問題だと思うんですよ。


 「ああいう大人になりたくない」とか、「ああいう家庭を作りたくない」みたいな人が多いと、より未来に希望が持てないと思うんです。


 また、社会全体で子供を持たれる方に対して負担の無い社会にしたいですよね。

 例えば子供が泣いたりした場合に舌打ちをする大人がいたり、産休を取ると出世しにくくなると「やりにくい」と思いますからね。一人一人のお子さんを持つ家庭に対する気遣いみたいなのが大事かなと思います。

 

 ということで、このように社会問題や政治について個人的な意見を述べていきますのでどうぞご覧ください。

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― 新着の感想 ―
こんにちは。 >「子育ての大変さ」はSNSを通じて見れば嫌でも情報を目にします。 本当に目にします。 子育て中の私からすれば、確かに大変だけど……そこまで? みたいな気がするんですよね。 子供だっ…
追記で質問 中将様は、どんな条件だったらご自身が出産しても良いと考えますか?  実現可能かは関係なく、思考実験としてどうぞ(^O^)/
先進国で出生率が下がる理由。 生物学的に人間の出産そのものが、女性の身体に甚大な負担があるからじゃないですか? ここまで死亡率が高い出産をしているのは人類だけです。 これだけ科学技術が進んでいるんで…
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