第六話 どきどき!グループデート
どうして悠馬くんがここにいるの?
聞いてないし。いや、聞いてたら来てないし……。
私が固まってると、真白がちらっと私の顔を見て、声をかけてきた。
「……大丈夫? 帰ろうか?」
その言い方は、いつもより少しだけ静かで、やさしかった。
「……平気。たぶん」
そう答えたけど、心臓はバクバクしてる。
顔、赤くなってないかな。メイク、崩れてないかな。
ていうか、なんで悠馬くんがここにいるの……?
更衣室を抜けて、プールサイドに出ると、美幸先輩が手を振ってくれた。
「ななみちゃん、真白ちゃん、こっちこっち~!」
先輩は水着の上にラッシュガードを羽織っていて、髪は高めのポニーテール。
明るくて、いつも通りの“先輩感”がある。
「紹介するねー。こっち拓海、男子テニス部の二年。一応、彼氏。
で、こっちが拓海のダブルスの相手、颯太。」
「で、こいつが弟の悠馬。ななみちゃんは知ってるよね。
家でダラダラしてたから、人数合わせで連れてきた。
こいつ、私に逆らえないから」
悠馬くんは、先輩の後ろでちょっとだけ気まずそうな顔をしていた。
私とは目を合わせない。
「で、こっちが、ななみちゃんと真白ちゃん。テニス部の一年ね」
「よろしくお願いします」
真白は笑顔で返した。
私は、うまく声が出せなかった。
***
プールサイドのベンチに荷物を降ろすと、男子たちはさっそくプールの方に飛び出して行く。
美幸先輩がその後に続く。
波の出るプールで、美幸先輩たちがはしゃいでいる。
人工の波がざぶんと押し寄せるたびに、キャーキャーと声が響く。
拓海先輩と颯太先輩は、浮き輪を持ってふざけ合っていて、悠馬くんもその後ろで笑っていた。
私は、真白と並んでプールサイドのベンチに座って、それをぼんやり見ていた。
水しぶきがきらきら光って、目を細めるほどのまぶしさだった。
真白は、足を組みながらペットボトルの麦茶を飲む。
しばらくして、美幸先輩が一人だけ戻ってきた。
濡れた髪から、水がぽたぽた落ちてきてる。
「はー、疲れたー」
ベンチの背にもたれて、息をつく。
「でもさ、馬鹿だね~、男子は。ほんとに。浮き輪でサーフィンとかやろうとしてるし」
大きなタオルで、髪の毛を拭きながら笑った。
なんか、すごく楽しそうで、ちょっとだけうらやましい。
そのすぐあと、拓海先輩と颯太先輩、そして悠馬くんも戻ってきた。
みんな髪が濡れていて、顔が赤くて、テンション高め。
「真白ちゃんたち、泳がないの?せっかく来たのに」
颯太先輩が聞いてくる。
真白は答えず、いたずらっぽく言った。
「拓海先輩と颯太先輩って、どっちが速いんですか? 泳ぐの」
その一言に、二人は顔を見合わせた。
「え、どっちだろ」
「よし、競争だな」
拓海先輩が立ち上がり、颯太先輩もすぐに続いた。
「じゃ、競泳プールで勝負しようぜ」
「負けた方、ジュースな!」
二人はそう言って、競泳プールに向かっていった。
美幸先輩が笑いながらタオルを肩にかけて立ち上がる。
「じゃ、審判やる~。真白ちゃんも行こ!」
気づいたら、悠馬くんと二人きりになってた。
やだっ! どうしよう! 急にどきどきしてきた。
遅くなったけど、何とか今日もアップできました。